突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「――い、おい」
遠くの方で声がする。肩から振動が伝わってきて、ゆっくりと目を開けた。ぼんやりとした視界の中に影が見える。
「おい、日菜子。起きろ」
「んん……ん? わっ!」
視界がクリアになった瞬間、またしても目の前にある彼の顔に驚いて、間抜けな声を上げてしまった。
私……眠っちゃってた?
両頬を軽く叩き、まだ頭の半分に居座っている眠気を追い出そうとする。
「二十分の道のりで、よくもそこまで爆睡できたもんだな」
呆れ顔の彼が、からかうように言った。さすがに言い返す言葉もなく、私はできるだけ小さくなろうと肩を竦める。
いくら残業して疲れていたからって、やっぱり私、相当図太いみたい。
車から降りた彼は、助手席のドアを開けてくれた。