突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「降りろ。ついたぞ」

 小さくうなずいて、彼のあとを追った。
 まっすぐ伸びる石畳を進むと、建物が見えてくる。

 わぁ……大きい洋館。

 外観は付柱が整然と並んでいて、窓上にはジャコビアン様式の半円のアーチが施されていた。玄関部には角ドーム屋根を持つ塔屋がそびえている。

 ヨーロッパに旅行に来たみたい。

 あんなやり取りをしているせいで忘れかけていたが、彼はやはり立花グループの跡取りなんだと改めて実感させられた。

 しばらく眺めていたら、いつのまにかドアを開けて待っていたらしい彼に「いい加減入れ」と促(うなが)される。つま先にぎゅっと力を入れながら、意を決して足を踏み入れた。

「おじゃまします」

「今日からここはお前の家でもあるんだ。ただいまでいい」

 彼は無愛想に告げる。

 初めて来たっていうのに、いきなりただいまなんて言えるわけないじゃない。マンションかどこかを借りるつもりなのかと思ってたけど、ここって立花家の本宅よね? ここで同居するつもりだったなんて。本当に大事なことを言わないんだから!

 頭が悩乱する。
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