突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「皆さんは? こんな時間だけど、起きていらっしゃるならご挨拶しないと」

「あぁ、父と母はニューヨークにいる。父は数年前からニューヨークに造った支社を任されているんだ。結納が終わり、ふたりとも戻った。祖父は明日の夜まで仕事で地方にいる。だから今日はかまわない」

「そうですか……」

 ほっと胸を撫で下ろした。しかし、今度はある問題が脳裏を掠める。

 んっ? じゃあ、今日はこの広い家にふたりっきりなの!? あ、でも、ここにもお手伝いさんがいるかもしれない……!

「あ、ちなみにうちは、使用人も通いだ」

 淡い期待は見事に打ち砕かれた。途端に、全身の神経が張り詰める。持っていたトートバッグを身体の前で強く抱き締めた。

「おい、なんだその目は」

 向けられた警戒心たっぷりの眼差しに気が付いた彼は、不服そうに片方の眉をピクピクと痙攣させる。

「なにを妄想してるのか知らないけど、十年早いんだよ」

 馬鹿にしたようにせせら笑った彼は、玄関ホールの真ん中から上階へと伸びる大階段をさっさと上っていく。こぶしを震わせ見上げていると、「置いていくぞ」と声を掛けられ、足取り荒くその背中を追った。
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