突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「ここだ」

 案内されたのは、二階にあった左側の一番奥の部屋だった。レトロ調のドアを一気に押し開け、入っていった彼のうしろを及び腰で歩く。

 ここが、今日から私が生活する部屋……。

 恐らく二十畳以上あるその場所には、彼が言っていたようにすでにテーブルやソファー、クローゼットなども用意されていた。家具や部屋全体がアイボリーの壁紙に合わせた色調でまとめられていて、優しい雰囲気を醸し出している。祖父の好みである日本家屋で生まれ育った私には、どこもかしこもふかふかのカーペットが敷かれた洋館は少し新鮮だった。

「右の手前にあるドアがバスルームで、その奥にあるドアがトイレだ。中にあるものはなんでも好きに使っていい。必要なものは、その都度俺に言え」

「……ありがとう、ございます」

「礼はいいから、座れ」

 運んでくれていたスーツケースを壁のそばに置いた彼は、ドカッとソファーに腰掛けた。スーツのジャケットを脱ぎ、持っていた大きな紙袋の中身をテーブルの上に広げていく。

 豊かでコクのある香りがして、先ほどまでまるで主張してこなかった食欲が一気に刺激された。
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