突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「お姉ちゃんも婚約者の話を聞いた日、文句も不満も言わなかった。ただ、『この家に生まれた以上覚悟してた、仕方ない』って力なく笑っただけ。でも、お姉ちゃんはなにをやっても割と人並み以上にこなせるタイプだったし、色んなことに挑戦するのが好きだったから、あの日、きっと色んなことを諦めたんだと思う」

 あのとき見たその顔が、ずっと忘れられなかった。

「だから、結納の日。お姉ちゃんがいなくなって恨めしく思ったのも事実だけど、心の奥では、少し嬉しかった」

 〝諦めない〟を選ぶものに出会えたんだって。

 隣から、小さく笑みを零すのが聞こえてくる。

「そのせいで自分はこんな目に合ってるのに、能天気なやつだな」

 彼は優しいような、皮肉のような、独特の微笑を浮かべていた。思わずドキッとする。その表情が、初めて見る彼の素顔の気がしたからだ。

「……それはそれなの」

 気恥ずかしくなり、視線を泳がせた。その反応がおもしろかったのか、彼はいつもの意地悪な顔に戻る。
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