突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「なに?」

 耐え切れず問いかける。わずかに身体を跳ねさせた彼は、大袈裟に顔を背けた。

「いや。そんな恰好をしていたら、ますますガキみたいだなと思って」

「……そう思うなら、そんなに見ないでよ」

 声を尖らせる。腕を組み、鼻で短い息をついた。すると彼は、おもむろに立ち上がり、こちらに向かってくる。迫る影に戸惑い、一歩、二歩、と後ずさりをした。

 しかし、すぐ目の前までやって来た彼は、私を避けるようにして足早に横を通り過ぎてゆく。

「俺も入ってくる。先に寝ておけ」

 返事をする前に、背後にあるドアはバタンと音を立てた。

「なんなのよ」

 届かないとわかっていながらも、ため息とともに溢れ出る。不可解な行動のわけがわからず、私は少しの間彼が消えていったドアを眺めていた。

「本当に、先に寝ちゃおうかな」

 つぶやいた独り言が、スリッパの奏でる軽い足音と揃って高い天井に吸い込まれていく。
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