突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「出てきたら、お前が変なことやってるからだろ。なにしてた?」

「べ、別に。……ていうか、なんで裸なの!?」

 必死に平静を装おうとしたが、堪らず悲鳴にも似た声を上げる。首から掛けたバスタオルで濡れ髪を豪快に拭く彼は、黒のラフなロングパンツ姿で、上半身はなにも身に着けていなかった。「あぁ?」と不思議そうに手を止めた彼が、私を捉える。

 手で顔を覆い、勢い良く背を向けた。

「持っていくの忘れたんだよ。それよりお前、顔がトマトみたいだぞ。真っ赤」

 すっすっとカーペットを滑るような足音が迫る。それが止んだ瞬間、耳もとに微かな息遣いを感じた。飛び退けようとするが、背中が寝室のドアにぶつかる。顔に弱気のシワを走らせた私は、恐々と見上げた。ズボンのポケットに両手を突っ込んだ彼が、身を屈めてこちらを覗き込んでいる。目鼻立ちの整った顔が、すぐ目の前にあった。

「車でも思ったが、お前、男と付き合ったことないだろ」

 彼は、からかうように言う。

「……だったらなんなの」

「それなら、納得だと思って」

 身を起こした彼が、意地悪な含み笑いを浮かべた。強く唇を結び不機嫌さをあらわにすると、彼は言葉を続けた。
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