突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします

 用意を済ませ時間の少し前に家を出ると、門の前にはすでに一台の白い車が停まっていた。そばには眼鏡をかけたスーツ姿の男性が立っていて、慌てて駆け寄る。

 その足音で私の存在に気付いた男性も、こちらに走り寄ってきてくれた。

「初めまして。立花創の使いで参りました、立花の秘書をしております城田(しろた)でございます」

 無表情ながらとても丁寧な言葉遣いで話す彼は、深々と頭を下げる。大会社の常務を務める人間の秘書をしているだけあって、まれに見るとても綺麗なお辞儀だった。彼自身も一重のクールな目もとが印象的なとても整った顔立ちのイケメンで、背も高い。創と彼が並んでそこらへんを歩いていたら、ドラマの撮影かなにかだと勘違いする人も少なくないと思う。

 すごいコンビだな……。

 ついそんなことを考えて感心していた。我に返り、私も急いで頭を垂らす。

「お仕事にも関係ないのに、わざわざ来ていただいてすみませんでした。春尾日菜子と申します」

「伺っております。この度は、創様とのご婚約誠におめでとうございます」

「あ、ありがとうございます……」

 なんとか笑顔で応えたが、もしかすると少しばかり引きつっていたかもしれない。当たり前だが、これからこうして偽って生きていかないのかと思うと、底のない憂鬱さを感じた。
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