突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「本当は創様が会社まで送って差し上げたかったはずなのですが、何分(なにぶん)本日は早朝に急な予定変更がございまして。創様でなくてはならない大事な案件でしたので、恐れ多くも私が代わりに」

「えっ? それなら、城田さんも出社した方が良かったんじゃないんですか!?」

 なんの予定かはわからないけど、常務取締役を務める彼が直々に進めるような仕事なら、秘書もやることは多いはず。間違っても、私の送迎なんてしてる場合じゃない。

 狼狽える私をよそに、彼は冷静に口を開いた。

「本来創様は、秘書など必要にされないほどなんでも器用にこなされてしまうお方ですから。私が少し離れたくらいじゃ、なにも困ることなんてないと思いますよ。それに、珍しいのです。創様が急に連絡されてきて、なにかお願い事をされるのは。日菜子さんのことがよほどご心配だったのですね」

 最後の一文に、唖然とする。

 創が私を心配? たしかに、こうして城田さんを寄こしてくれているけど、これが優しさなのか、それとも彼の言っていた徹底された夫婦のフリなのか。恐らく後者だろう。家での対応を見ている限り、そう思えた。朝からもからかわれたんだもん。すっかりおもちゃにされている気がする。

 つい項垂れそうになったが、すんでのところで姿勢を整えた。
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