突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「もちろんです。必ずお渡し致します」

 ふたつの缶を握り締めた彼が、少し嬉しそうな声色で言った。

「……お願いします」

 気恥ずかしくなり、言い終えた私は伏し目になる。

 ささやかだけど、大事な仕事があるなら少しでも力をつけないとなんて温情をかけてしまった。でも、こうして城田さんを手配してくれたのは彼だし、そのお礼だと思えば……。

 そう何度も自分に言い聞かせながら、私は胸の中で渦巻く複雑な感情を必死で落ち着かせた。
< 66 / 128 >

この作品をシェア

pagetop