突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「もしかして、心配して掛けてきてくれたの?」

 電話の向こうの「はっ!?」と大きな声に耳を劈(つんざ)かれる。

『そんなんじゃねぇよ。忘れ物してたからよ。ほら、いつも寝る前に使ってたヘアオイル忘れてただろ? あれないと、お前寝起き山姥(やまんば)みたいになるんじゃねぇの?』

 彼は早口で捲し立てた。

 子供のころから、本当に変わらない。
 いつまでも素直じゃない彼の態度に、笑ってしまいそうになるのをぐっと堪える。

「山姥って……。でも、今日の朝すごい寝癖で大変だったの。真紘、悪いんだけど立花邸まで届けてくれる? あれ、美容院から取り寄せてもらってて、すぐには手に入らないから」

『仕方――』

 会話が強制的に途切れた。手に持っていたスマートフォンが浮き上がるのを横目に捉える。追うように勢い良く見上げた。

 いつのまにか背後にいた創が、こちらを見下ろしている。その手には、私から取り上げたスマートフォンが握られていた。

「なにするのよ!」

 憤然とした面持ちで彼に迫る。しかし、その顔は私の勢いに怯むどころか、まるで凍り付いたように冷ややかなものだった。人の寄り付けない迫力に、身体には強張りの電流が走る。
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