突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「あれの父親、わしの息子は、経営者には向いておらん。良くも悪くも優しすぎたのじゃ。だがわしは、諦めきれず息子が幼いときから将来会社を任せる身として厳しく将来必要なことを叩き込んできた。それが悪かった……」

 その顔には暗い影が落ちた。

「入社して十年近くが経ったころだったかの。周りから向けられる好奇や軽蔑の眼差し。身にのしかかり続けてきたかなりのプレッシャー。それにいつまでも答えられない自分。色んなものが積み重なり、あやつはついに壊れてしまった。わしが、壊したようなものなんじゃよ」

 影は勢いを増し、彼を飲み込みそうになる。居ても立っても居られなくなって、テーブルに置かれていた彼の手にそっと自分の手を重ねた。

「そんな父の姿を幼いながら間近で見ていた創は、きっと、そのときに自分の将来を決めたのであろう。父親も現在は回復してニューヨークにいるが、創は、優しい父と、未だ社長として居座るわしの身を案じておるのじゃ」

 そんなことがあったなんて、まったくしらなかった。結納のときにお会いした創のお父様は、顔は創とよく似ていたけれど、たしかにとても温和そうな雰囲気の優しい人だった。

 何度かお酌しようとした私に、『僕はいいから、日菜子さんも休んでね。気を使ってばかりで疲れたでしょう』と言ってくれたのが印象に残っていた。
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