突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「会社の業務提携なんかも噂されていますが」

「会長であるおじい様と立花社長は古くから親交がおありと伺っておりますが、日菜子さんと創さんとの出会いもやはり幼少期なんですか!?」

 矢継ぎ早に質問が飛んでくる。家へ入ろうにも、囲まれていて動けなかった。人の波に飲み込まれてしまいそうになる。顔を覆っていた手が、微かに震え出した。

 痛いし、怖い。でも、なんとかしないと、まだ正式に発表もされてないのにこのままじゃ記事にされてしまう。

「日菜子さん! お話をお聞かせください」

「日菜子さん!」

 私の名を呼ぶ声が、全身に突き刺さるようだった。大きく息を呑む。

 もう、こうするしかないよね……。

 意を決して、腕を下ろそうとしたそのときだった。私は強い力に身体を引き寄せられ、頭から布のようなもので覆われる。視界は突然真っ暗になった。報道陣は驚きの声を上げ、一様に熱を増している。

「今お話しできることはございません。お引き取り下さい」

 聞き覚えのある低い声がした。

 ……創?

 抱えられるようにお腹へ回されていた腕に、ぎゅっと力が込められる。強張りがそこから解けていった。

 来てくれたんだ……。

 温かな波が全身に広がっていく。感に堪えなくなり、鼓動は早鐘を打ち始めた。
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