突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「来い。行くぞ」

 ささやかれ、うなずくと、連れられるようにして屋敷の中へと戻った。

 玄関のドアが閉まる音がしても、わずかな騒がしさが届いている。もう大丈夫だとわかっていても、私は突っ立ったまま自分を覆ってくれている布を取れないでいた。

 視界が明るくなる。見上げると、スーツのジャケットを手にした創がこちらを覗き込んでいた。わかっていたはずなのに、改めて先ほど助けてくれたのが彼なんだと実感したら、頬の熱が上るのを感じる。彼は、真剣な顔つきをしていた。

「ケガは?」

「だ、大丈夫」

「そうか、よかった……」

 ふーっと安堵の息をつくのが聞こえてくる。

「あんなに、どうして……」

「嗅ぎつかれたんだろう。驚いたか?」

「少し」

 しかし私は、囲まれ怖い思いをしたことよりも、触れたその場所から伝わってきた彼の体温の温かさに動揺していた。

 そう言えば、こうして話すのも久しぶりだ。

 目を瞬かせたまま見上げる。彼は私の思いに気がついたのか、ぐっと喉を詰まらせたあと顔を背けた。
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