突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「怖気づいたのか? お前らしくない」

 挑発するような声が降ってきた。また小馬鹿にされるのだろうと唇を結ぶが、彼は予想とは裏腹に、優しげにこちらを見下ろしている。予想外の表情に、私は瞬きも忘れてまっすぐに彼を見据えた。

「いつも子犬みたいにキャンキャン吠えて、無駄にパワフルで、俺がなにを言っても食いかかってくるのがお前だろ」

「……全部悪口じゃない」

「事実だろ?」

 気恥ずかしさにそっけなく答える。彼はそれがわかっているのか、愉快そうに肩を揺らしていた。

「安心しろ。もし結婚したら、一生ともに戦ってやる」

 言い終えた彼が、私の頬をするりと撫でる。驚いて身体を硬直させると、彼は怪しく片方の口角だけをつり上げた。反射的に身構える。

「戦うって、なにと?」

「人生に決まってるだろ。俺はなにがあっても、お前の隣にいる。ともに戦うなら、お前がいい」

 力強く告げられた。
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