突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「はいはい。それでいいわよ。でも、次帰ってこなかったらまたデコピンだからね」

 背伸びをし、彼の額を指さす。彼は怯む様子もなく、負けじと鼻を鳴らした。

「寂しいのか? 世話がかかる犬だな」

「そうよ。ひとりは寂しい。だから、創。帰ってきて」

 懇願する。彼は大きく目を見開いた。

「嘘よ」

 耐え切れず噴き出す。ただちに眉根を寄せた彼が、わざとらしく大袈裟なため息をついた。

「これで許してあげる」

「お前なぁ」

 呆れたように吐き捨てられたが、彼は穏やかさを顔中に滲ませている。

 先のことはどうなるかはわからない。それでも、先ほど彼に言った言葉が、あながちすべて嘘というわけではなかった。彼にはきっと、一生言わないけれど。
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