夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
ふと、自分の手元を見ると……。
私の手からバスケットが忽然と消えている。
まさか……!!
「バ、バロンッ……!!」
ハッとして視線を移した時には、時すでに遅し。
バロンは私から奪ったバスケットの上を開けて、中を見てしまった。
ーー終わった。
私の目に映るのは、目を見開いて固まっている、茫然とした表情のバロン。
もうダメ!
恥ずかしくて、泣きたくなる。
バスケットの中を覗く彼の横顔を、これ以上見ていられないと限界が襲う。
「……。
これ、アカリが作ったの?」
「っ……か、返して!
グシャグシャで恥ずかしいから〜っ!!」
カァ〜ッと全身に熱が高まって、今すぐこの場から逃げ出したい。
いや、その前に!
例のブツを回収しなくては!!
パニックになりながらも、羞恥の元であるバスケットに私はロックオン。
取り戻そうと、懸命に手を伸ばした。
ーーが。
バロンに敵うはずもなく、呆気なく掴まれる私の手。
色んな意味で泣きたくなって、涙が溢れそうになった。