夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

けどね。
そんな私の涙は、彼の行動で一瞬にして引っ込むの。


「……なんで?
僕の為に作ってくれたんじゃないの?」

掴まれていた手をあっという間に引き寄せられたと思ったら……。
いつになく優しい声を響かせる彼に、気付いたら私はギュッと抱き締められていた。


一瞬、何が起きたのか分からない。
さっきまでの熱が一気に消え去って、今度はフリーズ。

そして……。


「すっごく、嬉しいんだけど……。貰っちゃ駄目なの?」

「っ……!」

くすぐったい、囁くような口調で耳元で尋ねられて、また私の熱は一気にボンッと高まる。
自分の状況を把握して、心臓が爆発しそう。


「可愛いね。猫の形のクッキーだ。
これ、アイシングクッキーって言うんだっけ?」

「え?う、うん。バロン、詳しいね」

アイシングクッキー。
粉砂糖や卵白を混ぜて作った焼き菓子を覆う甘いクリーム状のペーストで、表面をデコレーションしたクッキーの事だ。

ワタワタと慌ててしまいそうな私だったが、大好きなお菓子作りの質問には何とか答える事が出来た。
< 171 / 475 >

この作品をシェア

pagetop