俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
彼女のことは頭から離れず、一年の終わりの日を迎えた今日も、心は重く淀んだまま。

麗は実家に帰ると言っていたし、俺がいなくても、もうひとりではないのだから心配はいらないだろう、なんてお節介なことを考えてばかりだ。

俺は仕事に逃げたくても休みではできることも限られているし、ひとりで過ごすのに正月料理を作ったって虚しいだけだし……。

自宅のソファに深く身体を沈め、ぼんやりとそんなことを考えていたそのとき、インターホンが鳴った。気怠げに腰を上げてモニターを見に行くと、意外な人物が映っていて、俺は眉をひそめる。


「桐原?」


さらりとした黒髪に眼鏡をかけた、男の俺から見ても綺麗な容姿だと思うヤツがそこにいた。こいつがここに来ることは最近ではめっきりなくなっていたが、一体なんの用だろうか。

とりあえずオートロックを解除して中へ通した。すぐにやってきた彼は、怪訝そうにする俺にやんわりと微笑む。


「なにしに来たんだ、こんな年の瀬に」

「今年も世話になった挨拶をしに来たんですよ。あと、あなたが孤独に耐えかねて飼い始めたペットの様子を見に」


桐原は手にしているスーパーの袋を軽く持ち上げ、笑みを意地悪っぽいものに変化させた。
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