俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
絶対そんな用事じゃないだろ……。というか、孤独に耐えかねてウサギを飼ったわけじゃない。引っ越したら部屋が広くなったから、少し物寂しい気がしただけで。

慣れた様子で部屋に上がる色男にじとっとした視線を送っていると、彼はゲージの前にしゃがんでピーターを撫で始める。


「久しぶりですね、ピーター。おやつ買ってきましたからね」

「なんでお前にも懐いてんだよ……」


動物相手にも敬語で話す姿に吹き出しそうになるも、飼い始めたときに一回会っただけにもかかわらずおとなしく撫でられているピーターを見て唖然とする。

そんな俺に、腰を上げた桐原はわざとらしくこんなことを言う。


「ゲージの中が汚れてますよ。私の代わりにお世話してくれる彼女は来ていないんですか?」

「……あいつは実家に帰ってるから」

「ようやく想いが実ったのに、どうして自ら捨てるなんて馬鹿なマネをしたんです」


適当に答えたものの、鋭くなった声が返ってきて俺は目を見開いた。今の口ぶりからして、俺たちのことをすべて知っているらしい。


「なんで知ってんの」

「橘さんから聞きました。忘年会のあと、有咲さんと話したらしいですよ」
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