俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
桐原も呆れ顔になり、ため息交じりに「なにやってんですか」と言いながら、俺の向かいに腰を下ろす。


「まだ紅川さんの真意がわかったわけじゃないでしょう。そんなに早まらなくてもよかったのでは?」

「親父の店をパクったって以外にどんな理由がある? 円満解決するような理由なんて思い浮かばねぇよ」


ソファの背に肘をかけ、ぶっきらぼうに吐き捨てた。和解できると思ったら、最初から麗を突き放すことなどしていない。


「ご苦労なことに年明け二日から営業するらしいから、さっそく突き止めてくるつもりだ。そこでどうなっても、きっと麗はもう俺を見限ってる」


仮に和解できたとしても、俺は彼女を傷つけたのだし、とっくに嫌われているかもしれない。とにかく、俺たちがやり直すことはないだろう。

やりきれなさを押し殺すべく、桐原が持ってきた缶ビールに手を伸ばす。すると、彼はおもむろに眼鏡に手をかけ、それを外しながらどこか挑発的な瞳をこちらに向けてくる。


「なら、俺が有咲さんをもらうよ?」


突然変わった口調と雰囲気に、プルタブを開けようとする俺の手が止まった。
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