俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
「有咲さん、二日まで帰省してるんだろ。あなたがリオンに行っている間に、新潟デートにでも誘ってみるかな」


勝手にしろとヤケになりつつも、胸がざわざわと騒がしい音を立てて不快さを覚える。

こいつと麗が付き合うところなんて見たくない、というのが本音だ。桐原に限らず、他の男が彼女に寄り添うシーンなど想像もしたくない。

彼女は俺のものではないというのに、未練がましいことを考えてしまう自分に辟易し、またひと口ビールを呷ると少々雑にテーブルに置く。


「そんなつまらねぇ話しかしないんなら帰れ。御曹司の坊ちゃんは、パパママが豪華な料理用意して待ってんだろ」

「はぁ……地雷踏みすぎだって」


素っ気なく投げた俺の仕返しのセリフに、桐原は心底不愉快そうな顔をして、苛立ちが滲む声で呟いた。

実はこの男、大手食品会社の社長の息子なのだ。ただ、本人は御曹司扱いされることを昔からひどく嫌がっていて、一時は家族と絶縁状態になりかけたほど。

その仲を取り持ったのが俺で、親父さんから感謝されてパーフェクト・マネジメントを立ち上げるときにいろいろと援助してもらった恩がある。
< 211 / 261 >

この作品をシェア

pagetop