私の好きな警察官(ひと)!

「最後に見たのは……」


「5、5階でした」


震える声で蓮見さんに告げれば、私を振り向いた蓮見さんが驚いたように目を見開いて、それから早口で



「5階だ。何分くらいかかる?」


電話の向こうの女の人に少し焦ったように言葉を繋いで、



「30分はかかるかと……。大変申し訳ありません。エレベーター内で静かにお待ちください」


「あぁ……なるべく早く頼む」



それだけ告げて電話は切れた。
ちらりと私を見た蓮見さんの細かい表情までは、暗くて分からないけれど。



「……すぐメンテナンス会社が開けてくれる」


「はい、ありがとうございます」



多分、私が少なからず怖がっていることに気づいている。そう分かるくらい、声色が優しいから、安心して泣いてしまいそうだ。


足はまだガクガクと震えていて。
小刻みに震える手を必死に押さえつける。


「そんな泣きそうな顔してんじゃねえよ」


「……こんな真っ暗なのに、なんで分かるんですか」



私の所へゆっくり歩いてくる蓮見さんに、どうしようもなく抱きついてしまいたい衝動。今すぐその胸に顔を埋めて、何も考えなくていいくらいギュッとキツく、抱きしめて欲しい。



「俺を誰だと思ってんだよ」


「怖くないですよ、ちょっと驚いただけです」


「……声が震えてんだよ。この意地っ張り」




───グイッ



「っ……」



蓮見さんはズルい。

私の腰に腕を回して、軽く私を抱き寄せる。
ギュッと強く自分の胸に私を抱き込んで、それでいて蓮見さんの鼓動はちっとも速まったりしないんだ。


私のことなんか、なーんでもお見通しで。

抱きしめて欲しいと思った時に抱きしめてくれるくせに……これで好きになるなって言う方が無理だと思う。
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