異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「若菜さんは優しすぎます。ですが、今回はあなたに免じてこいつらを許すことにしましょう」
私がアスナさんとローズさんを庇っていることは数秒で見破られた。仕方ないといった様子で苦笑するダガロフさんに、叱られていたふたりも足を崩した。
「若菜さん、シェイド王子が探しておりましたよ。今なら部屋にいらっしゃると思うので、案内しましょう」
ダガロフさんの申し出をありがたく思いながら頷く。笑顔で手を振るアスナさんと「ヘマするんじゃないわよ」と声をかけてくるローズさんに見送られて、私はシェイドの部屋へと歩き出す。
「このミグナフタでの生活も今日で最後だと思うと感慨深いですね。戦もありましたが、基本的には穏やかでしたから」
少し前を歩くダガロフさんが柔らかな表情でこちらを振り向いた。
ダガロフさんがここでの生活を穏やかだと感じていてくれたことにホッとして、私は表情を緩める。
すると彼はふいに足を止めて私に向き直った。真摯な眼差しが注がれ、なんとなく大事な話をされるのかもしれないと予感した私は背筋を伸ばす。
「若菜さんのおかげで俺は生きている。もう一度、自分の正義に従って剣を振るえるチャンスをくださったあなたを俺は必ず守ります」
「ダガロフさん……私も居場所をくれた皆さんを治療師として守ります。だから一緒にシェイド王子が国王になるとことを見届けましょうね」
そう伝えて気づかされた。私はいつからか、シェイドが国王になるまで元いた世界に帰れないと思っているらしい。支えたい、守りたいという感情が胸にあふれて私の原動力になっていた。
「若菜さんのその強さは皆を突き動かす。俺たちの背中を安心して預けられます」
「そう言ってもらえて嬉しいです」
笑みを交わしながら、再び歩き出した。階段を上がって真紅の絨毯が敷かれた廊下に出ると、信じられない光景が飛び込んできて言葉を失う。
ある一室の扉の前でシェイドとアシュリー姫が抱き合っていたからだ。頭が真っ白になり、じわじわと胸を針で執拗に疲れた痛みに襲われる。
廊下で立ち尽くしていると、シェイドの腕の中にいるアシュリー姫が私たちの存在に気付いた。目が合った瞬間に勝ち誇ったように笑われ、耐えきれなかった私は背を向けた。
私がアスナさんとローズさんを庇っていることは数秒で見破られた。仕方ないといった様子で苦笑するダガロフさんに、叱られていたふたりも足を崩した。
「若菜さん、シェイド王子が探しておりましたよ。今なら部屋にいらっしゃると思うので、案内しましょう」
ダガロフさんの申し出をありがたく思いながら頷く。笑顔で手を振るアスナさんと「ヘマするんじゃないわよ」と声をかけてくるローズさんに見送られて、私はシェイドの部屋へと歩き出す。
「このミグナフタでの生活も今日で最後だと思うと感慨深いですね。戦もありましたが、基本的には穏やかでしたから」
少し前を歩くダガロフさんが柔らかな表情でこちらを振り向いた。
ダガロフさんがここでの生活を穏やかだと感じていてくれたことにホッとして、私は表情を緩める。
すると彼はふいに足を止めて私に向き直った。真摯な眼差しが注がれ、なんとなく大事な話をされるのかもしれないと予感した私は背筋を伸ばす。
「若菜さんのおかげで俺は生きている。もう一度、自分の正義に従って剣を振るえるチャンスをくださったあなたを俺は必ず守ります」
「ダガロフさん……私も居場所をくれた皆さんを治療師として守ります。だから一緒にシェイド王子が国王になるとことを見届けましょうね」
そう伝えて気づかされた。私はいつからか、シェイドが国王になるまで元いた世界に帰れないと思っているらしい。支えたい、守りたいという感情が胸にあふれて私の原動力になっていた。
「若菜さんのその強さは皆を突き動かす。俺たちの背中を安心して預けられます」
「そう言ってもらえて嬉しいです」
笑みを交わしながら、再び歩き出した。階段を上がって真紅の絨毯が敷かれた廊下に出ると、信じられない光景が飛び込んできて言葉を失う。
ある一室の扉の前でシェイドとアシュリー姫が抱き合っていたからだ。頭が真っ白になり、じわじわと胸を針で執拗に疲れた痛みに襲われる。
廊下で立ち尽くしていると、シェイドの腕の中にいるアシュリー姫が私たちの存在に気付いた。目が合った瞬間に勝ち誇ったように笑われ、耐えきれなかった私は背を向けた。