異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「どうしよう……」
自分の軽率な行動のせいでシェイドみ迷惑をかけてしまう。私はあの人の力になりたい
のであって、足手まといになりたいわけではないのに。
沈んでいく気持ちにハッとして、弱気になっている場合ではないと自分を鼓舞する。とにもかくにも縄を解かなければ逃げられないので、私は何度も手首を動かした。
「くっ、うう……全然外れない」
しばらく粘ってみたのだが、縄は思いのほか頑丈に結ばれているらしい。おかげさまで手首の皮膚がヒリヒリと痛む。目視はしていないけれど、おそらく擦り切れているだろう。
「私、このままなにも出来ずに攫われてしまうの?」
ため息をついて無機質な木製の床の目に視線を落とす。
ニドルフ王子がそこまでして私を手に入れたいのは、本当に治療師長としての力を買ってくれたからなのだろうか。
前にバルトン政務官が『ニドルフ王子はそちらの治療師のお嬢さんの腕を警戒しているようでしてね。攫えないなら殺すように言われていたのですよ』と言っていた。殺すほうが攫うより簡単だというのに、私を生かして捕らえたい理由が謎だ。
取り留めのない考えがグルグルと脳内を回っていたとき、バタンッと勢いよく小屋の扉が開いた。
我に返って顔を上げると、私のすぐ横に人が転がってくる。
「まさか自分から捕まりにくるとは思わなかったぜ。やっぱりその女はあんたの弱みだったんだな」
そう言ってアージェとは別の隠密が突き飛ばしたのは濃紺の髪に白の軍服姿の男性。心臓が嫌な音を立て、今見ているものはすべて嘘だと何度も自分に言い聞かせる。
隠密が小屋を出ていくのも気にならなくらい、私はそばに転がされた男性から目が離せないでいた。
「ぐっ……無抵抗な人間に手荒な真似をするやつらだな。兄上は随分素行の悪い者たちをそばに置いているらしい」
彼は痛みに顔を歪めながら両手を後ろで縛られた状態で器用に上半身を起こす。いまだに錯覚かと思いながら、まじまじと彼の顔を見つめて名前を呼ぶ。
「シェイド、どうしてここに……?」
「それは俺のセリフだ」
どうやったのか、彼は縄を解くと自由になった腕で私を強く抱き寄せる。彼の胸に顔を埋めるような形になり始めは落ち着かなかったが、じわじわと胸に安息感が広がった。
自分の軽率な行動のせいでシェイドみ迷惑をかけてしまう。私はあの人の力になりたい
のであって、足手まといになりたいわけではないのに。
沈んでいく気持ちにハッとして、弱気になっている場合ではないと自分を鼓舞する。とにもかくにも縄を解かなければ逃げられないので、私は何度も手首を動かした。
「くっ、うう……全然外れない」
しばらく粘ってみたのだが、縄は思いのほか頑丈に結ばれているらしい。おかげさまで手首の皮膚がヒリヒリと痛む。目視はしていないけれど、おそらく擦り切れているだろう。
「私、このままなにも出来ずに攫われてしまうの?」
ため息をついて無機質な木製の床の目に視線を落とす。
ニドルフ王子がそこまでして私を手に入れたいのは、本当に治療師長としての力を買ってくれたからなのだろうか。
前にバルトン政務官が『ニドルフ王子はそちらの治療師のお嬢さんの腕を警戒しているようでしてね。攫えないなら殺すように言われていたのですよ』と言っていた。殺すほうが攫うより簡単だというのに、私を生かして捕らえたい理由が謎だ。
取り留めのない考えがグルグルと脳内を回っていたとき、バタンッと勢いよく小屋の扉が開いた。
我に返って顔を上げると、私のすぐ横に人が転がってくる。
「まさか自分から捕まりにくるとは思わなかったぜ。やっぱりその女はあんたの弱みだったんだな」
そう言ってアージェとは別の隠密が突き飛ばしたのは濃紺の髪に白の軍服姿の男性。心臓が嫌な音を立て、今見ているものはすべて嘘だと何度も自分に言い聞かせる。
隠密が小屋を出ていくのも気にならなくらい、私はそばに転がされた男性から目が離せないでいた。
「ぐっ……無抵抗な人間に手荒な真似をするやつらだな。兄上は随分素行の悪い者たちをそばに置いているらしい」
彼は痛みに顔を歪めながら両手を後ろで縛られた状態で器用に上半身を起こす。いまだに錯覚かと思いながら、まじまじと彼の顔を見つめて名前を呼ぶ。
「シェイド、どうしてここに……?」
「それは俺のセリフだ」
どうやったのか、彼は縄を解くと自由になった腕で私を強く抱き寄せる。彼の胸に顔を埋めるような形になり始めは落ち着かなかったが、じわじわと胸に安息感が広がった。