異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「好きだから犠牲になるなんて、本当の意味で相手を大切にしてるとは言えないわ」
「へえ、どういう意味?」
私を捕らえているアージェは興味深そうに尋ねてきた。本気で攫う気があるのかと調子が狂いそうになるが、私は素直に教える。
「犠牲にされたほうは自分のせいで大切な人が死んでしまったとずっと後悔する。だから本気で相手を想うということは、ふたりで生きる道を諦めないことだと思う」
「綺麗事じゃない?」
「それでも私はそんな甘えた考えを馬鹿みたいに信じてる。ふたりで幸せになりたいから」
もちろん綺麗事では終わらせない。行動で示して見せる! と胸内で意気込んで、私はアージェの腕に噛みつく。
「――いってててててて!」
悲鳴をあげたアージェの腕が緩む。その隙を見逃さなかったシェイドは私の腰に手を差し込んで引き寄せると、後に飛び退きながらアージェの足に短剣を放った。
「ぐっ、やってくれるね……」
地に膝をついて負傷した脚をおさえるアージェ。一見私たちが優位に見えたのだが、アージェがほくそ笑むのに気づいた。
どうして笑って……あ!
アージェの視線の先、私を抱きしめるシェイドの背後に短剣を投げようと腕を振りかぶっている隠密を発見する。おそらく気絶していたはずの隠密だろうと頭の中は妙に落ち着いていて、私は迷わずシェイドの身体を突き飛ばした。
数歩よろけた彼の動きがやけに緩慢に見えた刹那、脇腹に鈍い痛みが走る。短剣が彼に当たらなくてよかったと、安堵から笑みを浮かべた私をシェイドが抱き留めた。
「若菜……!」
「ごめ……なさい、また無茶……して……」
怒っているだろうかと彼の顔を見上げれば想像の真逆、顔を歪めて今にも泣きそうな顔をしていた。
「シェイド、無事か!」
どこからか、聞き覚えのある声が聞こえた。混濁する意識の中で誰だろうと記憶を手繰り寄せていたら、声の主はすぐに姿を現す。
「女、お前その傷……」
顔を覗き込んできたのはエドモンド軍事司令官だった。
私の脇腹に刺さったままになっている短剣を見て、殺気を放ちながらアージェを鋭く睨みつける。その手が腰のロングソードの柄頭に添えられるとアージェは脚から短剣を引き抜いて、やれやれというふうに軽くせせら笑った。
「へえ、どういう意味?」
私を捕らえているアージェは興味深そうに尋ねてきた。本気で攫う気があるのかと調子が狂いそうになるが、私は素直に教える。
「犠牲にされたほうは自分のせいで大切な人が死んでしまったとずっと後悔する。だから本気で相手を想うということは、ふたりで生きる道を諦めないことだと思う」
「綺麗事じゃない?」
「それでも私はそんな甘えた考えを馬鹿みたいに信じてる。ふたりで幸せになりたいから」
もちろん綺麗事では終わらせない。行動で示して見せる! と胸内で意気込んで、私はアージェの腕に噛みつく。
「――いってててててて!」
悲鳴をあげたアージェの腕が緩む。その隙を見逃さなかったシェイドは私の腰に手を差し込んで引き寄せると、後に飛び退きながらアージェの足に短剣を放った。
「ぐっ、やってくれるね……」
地に膝をついて負傷した脚をおさえるアージェ。一見私たちが優位に見えたのだが、アージェがほくそ笑むのに気づいた。
どうして笑って……あ!
アージェの視線の先、私を抱きしめるシェイドの背後に短剣を投げようと腕を振りかぶっている隠密を発見する。おそらく気絶していたはずの隠密だろうと頭の中は妙に落ち着いていて、私は迷わずシェイドの身体を突き飛ばした。
数歩よろけた彼の動きがやけに緩慢に見えた刹那、脇腹に鈍い痛みが走る。短剣が彼に当たらなくてよかったと、安堵から笑みを浮かべた私をシェイドが抱き留めた。
「若菜……!」
「ごめ……なさい、また無茶……して……」
怒っているだろうかと彼の顔を見上げれば想像の真逆、顔を歪めて今にも泣きそうな顔をしていた。
「シェイド、無事か!」
どこからか、聞き覚えのある声が聞こえた。混濁する意識の中で誰だろうと記憶を手繰り寄せていたら、声の主はすぐに姿を現す。
「女、お前その傷……」
顔を覗き込んできたのはエドモンド軍事司令官だった。
私の脇腹に刺さったままになっている短剣を見て、殺気を放ちながらアージェを鋭く睨みつける。その手が腰のロングソードの柄頭に添えられるとアージェは脚から短剣を引き抜いて、やれやれというふうに軽くせせら笑った。