異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
夜、大広間で復興祭が行われた。私もシェイドに用意してもらった光沢のあるブルードレスを着て参加している。胸元が大きく開いているのだが、そこで輝くアンバーの宝石が上品さを損なわせないところがコーディネートしたシェイドの腕のよさを感じさせた。
髪は青薔薇のコサージュがついた髪留めでポニーテールにしている。毎日欠かさずつけているシェイドからもらった組み紐は手首に巻いた。
このような場には慣れないので広間の端のほうでシャンパンを頂いていると、急に歓声がわき上がった。広間の中央を見ればシェイドとアシュリー姫がこれからダンスをするのか、身を寄せ合った。
「あっ……」
心臓が抉られるような痛みを感じて胸をおさえる。彼らが手を取り合うのを合図に優雅な音楽が流れ始めると、呼吸さえも苦しくなる。
「やはり、アシュリー姫が未来のお妃様になるのかしらね」
「家柄も申し分ないですし、エヴィテオール王妃になる日は近いですな」
復興祭に参加している貴族や政務官から、ふたりの仲を微笑ましく見守る声が聞こえてくる。
庶民で彼らからしたら異世界の人間である私が、ここにいることが異質に思えた。気分が悪くなって、静かに広間を後にする。
廊下を歩きながら嗚咽が唇から滑り出た。そこで自分がどれだけ彼を好きになってしまったのかを思い知る。
「っ、でも……どう見たってお似合いだったわ」
皆が求めているのは王子に釣り合う家柄と美貌のある姫。私の努力では到底手に入らない、生まれながらにして彼と結ばれることは叶わないのだと厳しい現実に打ちのめされる。
「そもそも、私はこの世界にはいられないじゃない」
帰らなくちゃいけないんだからと、彼を諦める理由を探そうとしている自分に嫌気が差す。それは裏を返せば、彼を引き返せないほど好きになってしまったという証明になっていたから。
行先に迷った末に私が辿り着いたのはアージェの部屋だった。暇を持て余していると言っていたし、と自分の行動を正当化しようとする。でも心ではわかっていた。私は話し相手がほしかったのだ。
「あれ、今日は復興祭じゃなかった?」
ベットに胡坐をかいているアージェがドレス姿で現れた私を見て目を丸くする。私は苦笑しながら彼の隣に座った。