異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「私を攫ってどうするの?」
「随分威勢がいいな。なるほど、あいつが好みそうな女性だ」
ニドルフ王子の言うあいつとは、おそらくシェイドのことだろう。そこはかとなくだが、直観はそう答えを導いていた。
「あなたがシェイドの大事なものだからだ」
微笑を浮かべながら私の目の前まで歩いてきたニドルフ王子は冷たい瞳で見下ろしてくる。身体の芯から凍りつきそうなほど、彼の表情から感情が読み取れない。
「意味がわからないわ」
素直に疑問を口にする私をニドルフ王子は楽しげに見つめる。その冷たい指先が私の顎の触れて、輪郭をなぞるように頬に上がってきた。
シェイド以外の男性に触れらる嫌悪感に体が震える。拒絶反応にも近く、冷や汗が全身の毛穴からぶわっと噴き出した。
「俺はね、別に国王になりたいわけじゃないんだ」
ならどうして、シェイドを国から追放したのか。王位に興味がないのなら、実の父親である国王や実弟を手にかけたのはなぜだろう。行動と言動が合致していない。
顔をしかめる私にニドルフ王子はふふっと口元を綻ばせる。彼から感じるのはどれが本心で建前なのかが解せない違和感だ。
「だが、周囲は俺に国王になることを望んでいた。床に臥せっていた母上も死に際まで側室の息子であるシェイドにだけは王位を譲るなと言っていてね。だから俺は王位を継承するのは使命だと自分に言い聞かせて政務に励み、剣術も磨いた。でも、すべては義弟のシェイドのほうが上だった」
内容は彼の最も辛い過去のはずなのに、どうしてそうも愉快に話すのかがやはり理解できない。違和感は次第に狂気に代わり、私はゴクリと唾を飲み込んだ。小刻みに震えていると、彼はあざ笑うかのように私の頬をさすりながら続ける。
「次第に政務官や貴族の間でシェイドのほうが国王に相応しいのでは、という声が上がり始めた。それでも努力すれば認められると信じて第一王子という肩書に噛りついていたが、ついに父上からお前は王の器ではないと断言されてしまったんだ」
淡々と抑揚の欠落した声で語られたのはニドルフ王子の闇であり、シェイドとの間にある確執だった。
私は口を挟むこともできず、彼の話に耳を傾ける。
「俺の中でなにかが崩れ去った気がしたよ。俺から存在証明を奪ったシェイドが憎くて仕方なかった。俺に無価値という烙印を押した父上も、無責任な期待を押しつけた母上も、両親の愛情を一身に受けた弟のオルカも同様に」
だから肉親を手にかけたのかと、納得したくはないが腑に落ちる。ここまでの話を統括すると、シェイドへの執着が彼の歪んだ嫉妬心からきているのがわかった。
「随分威勢がいいな。なるほど、あいつが好みそうな女性だ」
ニドルフ王子の言うあいつとは、おそらくシェイドのことだろう。そこはかとなくだが、直観はそう答えを導いていた。
「あなたがシェイドの大事なものだからだ」
微笑を浮かべながら私の目の前まで歩いてきたニドルフ王子は冷たい瞳で見下ろしてくる。身体の芯から凍りつきそうなほど、彼の表情から感情が読み取れない。
「意味がわからないわ」
素直に疑問を口にする私をニドルフ王子は楽しげに見つめる。その冷たい指先が私の顎の触れて、輪郭をなぞるように頬に上がってきた。
シェイド以外の男性に触れらる嫌悪感に体が震える。拒絶反応にも近く、冷や汗が全身の毛穴からぶわっと噴き出した。
「俺はね、別に国王になりたいわけじゃないんだ」
ならどうして、シェイドを国から追放したのか。王位に興味がないのなら、実の父親である国王や実弟を手にかけたのはなぜだろう。行動と言動が合致していない。
顔をしかめる私にニドルフ王子はふふっと口元を綻ばせる。彼から感じるのはどれが本心で建前なのかが解せない違和感だ。
「だが、周囲は俺に国王になることを望んでいた。床に臥せっていた母上も死に際まで側室の息子であるシェイドにだけは王位を譲るなと言っていてね。だから俺は王位を継承するのは使命だと自分に言い聞かせて政務に励み、剣術も磨いた。でも、すべては義弟のシェイドのほうが上だった」
内容は彼の最も辛い過去のはずなのに、どうしてそうも愉快に話すのかがやはり理解できない。違和感は次第に狂気に代わり、私はゴクリと唾を飲み込んだ。小刻みに震えていると、彼はあざ笑うかのように私の頬をさすりながら続ける。
「次第に政務官や貴族の間でシェイドのほうが国王に相応しいのでは、という声が上がり始めた。それでも努力すれば認められると信じて第一王子という肩書に噛りついていたが、ついに父上からお前は王の器ではないと断言されてしまったんだ」
淡々と抑揚の欠落した声で語られたのはニドルフ王子の闇であり、シェイドとの間にある確執だった。
私は口を挟むこともできず、彼の話に耳を傾ける。
「俺の中でなにかが崩れ去った気がしたよ。俺から存在証明を奪ったシェイドが憎くて仕方なかった。俺に無価値という烙印を押した父上も、無責任な期待を押しつけた母上も、両親の愛情を一身に受けた弟のオルカも同様に」
だから肉親を手にかけたのかと、納得したくはないが腑に落ちる。ここまでの話を統括すると、シェイドへの執着が彼の歪んだ嫉妬心からきているのがわかった。