異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「煩わしい血の繋がりを絶った俺は決めたんだ。欲しいものは力づくで手に入れる。そして俺のものとなった国や人間は誰にも傷つけられることのないように守ると」
ニドルフ王子の心はどこから壊れてしまっていたのだろう。聞いていて胸にこみ上げるのは怒りでも軽蔑でもなく切なさだ。狂う前に止めてくれる人間がいれば、シェイドと敵対することなく共に豊かな国を気づけていたかもしれないのにと考えてしまう。
それから、ひとつだけわからないことがある。彼が王位に縋る気持ちはなんとなく察したけれど、それと私を攫うことになんの関係があるのかだ。
「私を攫ってどうするの?」
結局、最初の問いに戻る。
底知れない闇を飼っている彼の瞳が近づき、気圧された私は身を仰け反らせる。しかし身体はこれ以上後ろに倒せない。怯える小動物を簡単になぶり殺せるであろう彼は嗜虐的な笑みを口元に滲ませる。
「言っただろう、あなたは俺からずべてを奪ったシェイドの大事なもの。それを奪って初めて俺はようやくあいつに勝てる。俺の悲願が叶うんだよ」
やられたらやり返すという一方的な逆恨みではあるが、目的ははっきりした。
そしてそれを可哀想だとひと言で済ませるわけにはいかない。彼の孤独は同情に値するけれど、これまで行ってきた仕打ちは決して許されることではないのだ。
だからこれ以上罪を重ねさせてはいけない。奪った命への償いに贖罪をして、甘いかもしれないがシェイドと和解してほしい。
「もうやめて。シェイドからなにかを奪っても、あなたは永遠に満足できないと思う」
今やたったひとりの家族なのだからと彼を説得すると、突然教会の扉が開かれる。そこには供も連れずに現れたシェイドの姿があった。
「彼女から手を離せ」
危険な場所に単身でくるなんてどうかしている。彼を叱りたい気分だったが、本当は怖くてたまらなかった私は「シェイド!」と歓喜に震える声で呼んだ。
「アージェから聞いた、また無茶をしたらしいな。まったく、後でじっくり話は聞かせてもらうぞ」
珍しく怒っていた。その顔に笑みはないけれど、肩で息をしている。その鬼気迫る形相からもわかるように、シェイドは必死に自分を探してくれていたのだ。
ニドルフ王子の心はどこから壊れてしまっていたのだろう。聞いていて胸にこみ上げるのは怒りでも軽蔑でもなく切なさだ。狂う前に止めてくれる人間がいれば、シェイドと敵対することなく共に豊かな国を気づけていたかもしれないのにと考えてしまう。
それから、ひとつだけわからないことがある。彼が王位に縋る気持ちはなんとなく察したけれど、それと私を攫うことになんの関係があるのかだ。
「私を攫ってどうするの?」
結局、最初の問いに戻る。
底知れない闇を飼っている彼の瞳が近づき、気圧された私は身を仰け反らせる。しかし身体はこれ以上後ろに倒せない。怯える小動物を簡単になぶり殺せるであろう彼は嗜虐的な笑みを口元に滲ませる。
「言っただろう、あなたは俺からずべてを奪ったシェイドの大事なもの。それを奪って初めて俺はようやくあいつに勝てる。俺の悲願が叶うんだよ」
やられたらやり返すという一方的な逆恨みではあるが、目的ははっきりした。
そしてそれを可哀想だとひと言で済ませるわけにはいかない。彼の孤独は同情に値するけれど、これまで行ってきた仕打ちは決して許されることではないのだ。
だからこれ以上罪を重ねさせてはいけない。奪った命への償いに贖罪をして、甘いかもしれないがシェイドと和解してほしい。
「もうやめて。シェイドからなにかを奪っても、あなたは永遠に満足できないと思う」
今やたったひとりの家族なのだからと彼を説得すると、突然教会の扉が開かれる。そこには供も連れずに現れたシェイドの姿があった。
「彼女から手を離せ」
危険な場所に単身でくるなんてどうかしている。彼を叱りたい気分だったが、本当は怖くてたまらなかった私は「シェイド!」と歓喜に震える声で呼んだ。
「アージェから聞いた、また無茶をしたらしいな。まったく、後でじっくり話は聞かせてもらうぞ」
珍しく怒っていた。その顔に笑みはないけれど、肩で息をしている。その鬼気迫る形相からもわかるように、シェイドは必死に自分を探してくれていたのだ。