異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「俺は王として兄上を裁く」

「はははっ、やはりお前も俺と同じだったな」

 高笑いするニドルフ王子に「まだ話は終わっていない」とシェイドは続けた。ニドルフ王子は笑うのをやめて眉間にしわを寄せる。

「なんだと?」

「俺は義弟として、兄上が罪を償うまで支えるつもりだ」

 それを聞いたニドルフ王子は目を剥く。動揺からか後ずさる彼にシェイドはゆっくりと歩み寄った。

「兄上が欲しいものは地位でも国でもなく、愛情だったのだとやっと気づいた」

「俺はそんなものが欲しかったわけではない!」

 半狂乱に叫ぶニドルフ王子は、もはや余裕を失っていた。その場に崩れ落ちるようにして座り込み、耳を塞いでいる。見て見ぬふりをしてきた本心を認めたくないからだろうか、見るに堪えないほど苦しんでいるニドルフ王子に私はそっと声をかける。

「存在証明を奪ったシェイドが、無価値という烙印を押したお父様が憎かったのは誰よりも彼らに認めてほしかったから。無責任な期待を押しつけたお母様も、可愛がられていた弟のオルカさんが憎かったのも愛されたいと願っていたから。どれも愛情の裏返しなのよ」

 憶測だけれど、ほのかな確信がある。ニドルフ王子と接しながら感じた、孤独の中にある真実だと言い切れる自分がいた。

「兄上の心の嘆きに気づけず、すまなかった。王子としての俺は、あなたの行いをなかったことにできない。でも義弟としての俺は、どんな罪を犯していても兄上の味方で在り続けると誓おう」

 シェイドは決定打を放つように言い切った。ニドルフ王子は右目から涙を一滴こぼし、自嘲的に笑う。

「どうしたって俺は、お前には敵わないんだな……。シェイド、お前が謝る必要はない。すべては俺の弱さ故に招いたことだと、頭では理解していたんだ」

 でも心が受け入れなかったのだと、ニドルフ王子の悲痛な叫びが伝わってくる。自分の弱さを認められた彼はもう私たちに剣を向けることはないだろう。

 そう思った矢先、彼は愛剣を自身に向けて構えると一気に引き寄せた。

「――兄上!」  

 シェイドは瞬時に、ニドルフ王子の手に握られた剣をサーベルで弾き上げる。自殺を図ろうとしたニドルフ王子は死ねないとわかると、顔に絶望を浮かべてシェイドを見上げた。

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