異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「いいや、あなたは村の未来ある子供を救ってくださったのです。私からも礼を言わせてください」

 頭上から新たに声がかかり、私は顔を上げる。そこには木の棒をやすりで削って作ったような、体重を支えるには少し頼りない杖をついている村長がいた。

「先ほど泊めるのは一晩だけと言いましたが、あなたたちの傷が癒えるまでここで休んでいってください」

「村長、いいのですか?」

 シェイド様はにわかに信じ難い様子で瞳を丸くする。私たちを匿うということは、敗戦軍に加担したとしてニドルフ王子に罰せられるかもしれないのだ。それを覚悟の上で、私たちを置いてくれるということだろうか。

「はい、これは村全体の総意でしょう。そこの治療師の方が言っていたように、あなたが導く国の未来を見てみたくなった。私たちもシェイド王子と運命を共にしましょう」

 お辞儀をする村長に合わせて、村人たちが平伏した。村長の言葉を噛みしめるように、じっと目を閉じたシェイド様は静かに開眼する。

「必ずや王位を取り返し、この村も国も豊かにする。子供たちの笑顔が絶えない場所にすると、シェイド・エヴィテオールの名において誓おう」

 胸に手を当てて、シェイド様は片膝をついた。

 誓いを聞いた村人たちの目には希望が灯っていき、その言葉ひとつでこんなにも人の心を動かせる存在。それがこの国の王子なのだと、改めて心に刻んだ。


 その夜、私は村人と作った消化がよく栄養価の高い春菊やほうれん草、かぶの葉を入れた青菜のお粥を負傷した兵や治療師たちに配った。自力で食べられない者には介助して食べさせ、夕食後の服薬まで終わるとひと息つく。

「外では、歓迎の宴をしているようですね」

 いくらか体調が回復してきた負傷兵のひとりが、洗った布を巻いて救急箱にしまっている私に声をかけてくる。

 彼は私が異世界に来ていちばん最初に手当をした兵で、ミトさんという。

 ここにいる兵や治療師たちとは手当てをきっかけに随分と打ち解けることができた。知り合いのいないこの世界で、気の知れた人間がいるというのは心強い。

< 32 / 176 >

この作品をシェア

pagetop