異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「お前な、じゃじゃ馬にもほどがあるぞ」
「シルヴィ治療師長」
「戦場には俺が行く、救急箱を寄越せ」
「それはいけません。月光十字軍のせいでミグナフタ国は戦に巻き込まれたんですよ? あなたを死なせたら、関係に亀裂が入るかもしれない」
ロイ国王陛下がシェイドに目をかけているのは知っているけれど、今はミグナフタ国の協力がなにより必要な時期なので、できるだけ関係を崩すような理由を作りたくなかった。
もちろん、私がシェイドを助けに行きたいという気持ちもある。なので、引き下がることはできない。
私の顔をじっと見ていたシルヴィ治療師長は説得するだけ無駄だと悟ったのか、「口は達者だな」と呆れ混じりに言って肩から手をどけてくれた。
「お前と茶を飲む時間は悪くない。だから帰ってこい。でないと毎日墓場の前で文句をたれて、寝かせねぇからな」
「それは迷惑な話ですね。快適に永眠するためにも、ちゃんと帰ってくることにします」
横暴な言い方ではあるが、シルヴィ治療師長の言葉には気遣いが感じられる。
この世界に私の帰りを待ってくれている人がいるのだと思うと、不思議な気分だった。
私は伝令役の兵と共に戦場を駆け抜けて、敵陣である山のふもとに広がる森の中を進んでいた。
小枝を踏む音、草を掻き分ける音。全てが自分の命を脅かそうとしているようで神経質になる。嫌な汗が頬を伝い、救急箱を持つ手が震えた。
「若菜さん、この先です」
「え、わかりました」
私の名前、知ってたんだ。
このミグナフタ国の紋章入りの鎧をつけた伝令役の兵とは面識がない。なので名前を呼ばれたことに驚いてしまったのだが、伝令役が治療師長の名前を把握しているのは当たり前かと気にもとめなかった。
「着きましたよ」
少しだけ木々が開けた場所に出た私は、そこで待ち受けていたものを見て血の気が引くのを感じた。
目の前には黒の軍服を着た六人の王宮騎士団の騎士とエクスワイヤがいる。その中心には右肩の鎧から黒のマントのような布を垂らしたヘーゼルの短髪に、ゴールドの瞳を持つ三十代半ばくらいの男が立っていた。
彼のがっしりとした体躯は日に焼けて健康的な小麦色の肌をしており、その出で立ちはまさに鍛え抜かれた戦士。ただそこに立っているだけなのに、気迫が凄まじかった。
「シルヴィ治療師長」
「戦場には俺が行く、救急箱を寄越せ」
「それはいけません。月光十字軍のせいでミグナフタ国は戦に巻き込まれたんですよ? あなたを死なせたら、関係に亀裂が入るかもしれない」
ロイ国王陛下がシェイドに目をかけているのは知っているけれど、今はミグナフタ国の協力がなにより必要な時期なので、できるだけ関係を崩すような理由を作りたくなかった。
もちろん、私がシェイドを助けに行きたいという気持ちもある。なので、引き下がることはできない。
私の顔をじっと見ていたシルヴィ治療師長は説得するだけ無駄だと悟ったのか、「口は達者だな」と呆れ混じりに言って肩から手をどけてくれた。
「お前と茶を飲む時間は悪くない。だから帰ってこい。でないと毎日墓場の前で文句をたれて、寝かせねぇからな」
「それは迷惑な話ですね。快適に永眠するためにも、ちゃんと帰ってくることにします」
横暴な言い方ではあるが、シルヴィ治療師長の言葉には気遣いが感じられる。
この世界に私の帰りを待ってくれている人がいるのだと思うと、不思議な気分だった。
私は伝令役の兵と共に戦場を駆け抜けて、敵陣である山のふもとに広がる森の中を進んでいた。
小枝を踏む音、草を掻き分ける音。全てが自分の命を脅かそうとしているようで神経質になる。嫌な汗が頬を伝い、救急箱を持つ手が震えた。
「若菜さん、この先です」
「え、わかりました」
私の名前、知ってたんだ。
このミグナフタ国の紋章入りの鎧をつけた伝令役の兵とは面識がない。なので名前を呼ばれたことに驚いてしまったのだが、伝令役が治療師長の名前を把握しているのは当たり前かと気にもとめなかった。
「着きましたよ」
少しだけ木々が開けた場所に出た私は、そこで待ち受けていたものを見て血の気が引くのを感じた。
目の前には黒の軍服を着た六人の王宮騎士団の騎士とエクスワイヤがいる。その中心には右肩の鎧から黒のマントのような布を垂らしたヘーゼルの短髪に、ゴールドの瞳を持つ三十代半ばくらいの男が立っていた。
彼のがっしりとした体躯は日に焼けて健康的な小麦色の肌をしており、その出で立ちはまさに鍛え抜かれた戦士。ただそこに立っているだけなのに、気迫が凄まじかった。