異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「俺が指名する前に、自分から敵陣に行くと言い出してくれて助かりましたよ。噂に違わぬ勇敢な治療師だ」
「えっ――きゃっ」
伝令の兵に羽交い絞めにされて、私は救急箱を落としてしまった。身じろぐも男の力には敵わず、王宮騎士団の前に突き出される。
「俺はダガロフ・アルバート」
ヘーゼルの髪の男が、切れ長のゴールドの瞳で私を射貫く。
ダガロフという名前には聞き覚えがあった。月光十字軍がミグナフタ国まで逃げるときに、アスナさんが村で対峙した騎士団長の名前だ。
「あなたは豊富な医療の知識を持つ、優れた治療師だと報告を受けている。その力をニドルフ王子が欲しがっておられるので、このまま我が軍に来ていただきたい」
淡々と事務的に告げたダガロフさんの表情は、セメントで固められたように少しも動かない。来ていただきたいと言いながら、私を羽交い絞めにしている時点で意見など求めていないのだと思った。
「ダガロフさんはアスナさんたちの師匠なんでしょう? なぜっ、なぜ……このように敵対しなければならないのでしょう」
「主が望むからだ」
それはあらかじめ用意されていたもののように空っぽな返答だ。アスナさんやローズさんのように、シェイドの考えに正義があると信じて仕えているわけではないのだろうか。
「ニドルフ王子にそこまでして仕える意味が、ダガロフさんにはあるんですか?」
「あの方は俺の道を開いてくれた方だからな……」
静かに語り始めたダガロフさんの話は、今から十七年前まで遡る。
ニドルフ王子が現れるまで、長年のしきたりで農民が騎士になることは禁じられていたらしい。
ずっと騎士に憧れていた当時十八歳だった農民出身のダガロフさんは、身分を偽って王宮主催の馬上槍試合の一騎打ち――ジョストに参加した。結果は見事に優勝だったのだが、同郷の参加者によって身分を偽っていたことが露呈してしまう。罰せられそうになったところを観覧席にいたニドルフ王子がエスクワイアも通り越して騎士に叙任させた。
「えっ――きゃっ」
伝令の兵に羽交い絞めにされて、私は救急箱を落としてしまった。身じろぐも男の力には敵わず、王宮騎士団の前に突き出される。
「俺はダガロフ・アルバート」
ヘーゼルの髪の男が、切れ長のゴールドの瞳で私を射貫く。
ダガロフという名前には聞き覚えがあった。月光十字軍がミグナフタ国まで逃げるときに、アスナさんが村で対峙した騎士団長の名前だ。
「あなたは豊富な医療の知識を持つ、優れた治療師だと報告を受けている。その力をニドルフ王子が欲しがっておられるので、このまま我が軍に来ていただきたい」
淡々と事務的に告げたダガロフさんの表情は、セメントで固められたように少しも動かない。来ていただきたいと言いながら、私を羽交い絞めにしている時点で意見など求めていないのだと思った。
「ダガロフさんはアスナさんたちの師匠なんでしょう? なぜっ、なぜ……このように敵対しなければならないのでしょう」
「主が望むからだ」
それはあらかじめ用意されていたもののように空っぽな返答だ。アスナさんやローズさんのように、シェイドの考えに正義があると信じて仕えているわけではないのだろうか。
「ニドルフ王子にそこまでして仕える意味が、ダガロフさんにはあるんですか?」
「あの方は俺の道を開いてくれた方だからな……」
静かに語り始めたダガロフさんの話は、今から十七年前まで遡る。
ニドルフ王子が現れるまで、長年のしきたりで農民が騎士になることは禁じられていたらしい。
ずっと騎士に憧れていた当時十八歳だった農民出身のダガロフさんは、身分を偽って王宮主催の馬上槍試合の一騎打ち――ジョストに参加した。結果は見事に優勝だったのだが、同郷の参加者によって身分を偽っていたことが露呈してしまう。罰せられそうになったところを観覧席にいたニドルフ王子がエスクワイアも通り越して騎士に叙任させた。