異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「農民出身の俺を騎士団長に押し上げてくださったニドルフ王子は、俺の道標。たとえあの方が人の道を踏み外そうともついていくことが、俺の忠誠の証だ」
揺らぐことのない覚悟を抱いている誠実な顔つき。彼がニドルフ王子に恩義を感じているのはわかった。
でも、私には納得できない部分がある。
「ダガロフさんの忠誠は、ニドルフ王子も誰も幸せにできないものなんですね」
「どういう意味だ」
「本当にニドルフ王子を大切に思っているのなら、どうして人の道を踏み外してしまったとわかった時点で止めてあげないんですか? あなたが止めなかったら、ニドルフ王子は間違った道を進んでしまう。それでいつか、過去を悔いる日が来ます。ダガロフさんは、それを黙って見ているだけですか」
生意気なことを言っている自覚はある。
私は騎士ではないけれど、もしシェイドが道を違えたときは引っ叩いてでも止める。身分なんて関係なしに、怒鳴りつけてでも説得しただろう。
「そうそう、若菜ちゃんの言う通り」
どこから聞こえてきたのか、陽気な声が張り詰めた空気を割る。羽交い絞めにされたまま視線を動かすと、アスナさんが呑気に手を振っている。その隣には長い前髪をサッと払って、「敵に捕まるなんてトロイ女ね」と呆れるローズさんの姿があった。
「ま、あたしも同感よ。主のために共に闇に落ちるのは簡単だけど、騎士なら主を光りある道へ引き戻さなきゃ。それが真の忠誠でしょう。団長、あなたが教えてくれたことなのに忘れちゃったのかしら」
指先に髪を巻きつけながら、ローズさんは不敵に笑って首を傾げる。ふたりの騎士の登場に動じることなく、ダガロフさんは強く言い返す。
「その主があえて闇に落ちると言うのだ。汚れた道だと知っていて、それでもその先に手にしたい栄光があるのなら俺は共にいく。その覚悟こそが騎士の忠誠だ」
「それは忠誠ではないぞ、ダガロフ」
胸にしっかり打ち込むような力強い声がして、心臓が跳ねる。
アスナさんとローズさんが左右にずれ、真ん中から姿を現したのは濃紺の夜空を模した髪に琥珀の色彩が月を連想させる宵の王子。
「主の未来を守るために、時にはぶつかることも大事なことだ」
そこにいたのは微笑を浮かべながらも、鋭く引き締まった顔をするシェイドだった。
彼の姿を目に移した瞬間、緊張の糸が解れて視界が歪む。安堵の吐息をもらすと、頬に生暖かい雫が伝った。
揺らぐことのない覚悟を抱いている誠実な顔つき。彼がニドルフ王子に恩義を感じているのはわかった。
でも、私には納得できない部分がある。
「ダガロフさんの忠誠は、ニドルフ王子も誰も幸せにできないものなんですね」
「どういう意味だ」
「本当にニドルフ王子を大切に思っているのなら、どうして人の道を踏み外してしまったとわかった時点で止めてあげないんですか? あなたが止めなかったら、ニドルフ王子は間違った道を進んでしまう。それでいつか、過去を悔いる日が来ます。ダガロフさんは、それを黙って見ているだけですか」
生意気なことを言っている自覚はある。
私は騎士ではないけれど、もしシェイドが道を違えたときは引っ叩いてでも止める。身分なんて関係なしに、怒鳴りつけてでも説得しただろう。
「そうそう、若菜ちゃんの言う通り」
どこから聞こえてきたのか、陽気な声が張り詰めた空気を割る。羽交い絞めにされたまま視線を動かすと、アスナさんが呑気に手を振っている。その隣には長い前髪をサッと払って、「敵に捕まるなんてトロイ女ね」と呆れるローズさんの姿があった。
「ま、あたしも同感よ。主のために共に闇に落ちるのは簡単だけど、騎士なら主を光りある道へ引き戻さなきゃ。それが真の忠誠でしょう。団長、あなたが教えてくれたことなのに忘れちゃったのかしら」
指先に髪を巻きつけながら、ローズさんは不敵に笑って首を傾げる。ふたりの騎士の登場に動じることなく、ダガロフさんは強く言い返す。
「その主があえて闇に落ちると言うのだ。汚れた道だと知っていて、それでもその先に手にしたい栄光があるのなら俺は共にいく。その覚悟こそが騎士の忠誠だ」
「それは忠誠ではないぞ、ダガロフ」
胸にしっかり打ち込むような力強い声がして、心臓が跳ねる。
アスナさんとローズさんが左右にずれ、真ん中から姿を現したのは濃紺の夜空を模した髪に琥珀の色彩が月を連想させる宵の王子。
「主の未来を守るために、時にはぶつかることも大事なことだ」
そこにいたのは微笑を浮かべながらも、鋭く引き締まった顔をするシェイドだった。
彼の姿を目に移した瞬間、緊張の糸が解れて視界が歪む。安堵の吐息をもらすと、頬に生暖かい雫が伝った。