異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「若菜ならそう言ってくれると思った。ありがとう、ダガロフのことを頼む」
「もちろん、死なせはしないわ」
たとえ敵であっても、看護の精神は個人の属性などによって差別しないこと。誰にも平等に看護を受ける権利があるのだ。
それに私も、この人を死なせてはいけないと思う。シェイドにとって大切な仲間ならなおさら。自分が持ちうるすべての力を使ってでも助けようと、強い意思を抱きながら砦を目指した。
ダガロフさんを味方の兵の目を盗みながら砦に連れ帰り、他に当てがなかったので私の部屋の寝台で休ませた。
左目は見たところ穿孔はしておらず、角膜の表面が傷ついてできる潰瘍になっていた。
通常なら目薬や眼軟膏で治療するのだが、ここでは抗菌効果のあるびわの茶葉で目を洗うのが主流らしい。原始的ではあるが、できる限り手は尽くした。
戦況は団長を失ったことで王宮騎士団が撤退、事実上の月光十字軍とミグナフタ国の勝利となった。
そしてダガロフさんを匿うこと三日目の朝。私は彼が眠っている間に、部屋の至る所に濡れた布をかけていた。
角膜潰瘍は細菌感染などでさらに角膜に穴が開いてしまわないようにすることが要であり、ここには根本的な治療ができる目薬も道具も揃っていないため、目のバリア機能を上げる涙が乾かないように湿度管理をする必要があった。
「改めて感じるけれど、僻地の看護だわ」
元いた世界なら助かる病や怪我も、この世界では助からないものが多い。今回だって、ダガロフさんの角膜が穿孔していたら縫う必要があった。もちろん縫合は医者の分野であるし、そもそも麻酔なしでは不可能な処置だ。
不幸中の幸いとしか言いようがないわね。
顔を顰めていると、部屋をノックされる。ビクッと肩が震えて、恐る恐る扉を見やった。
ダガロフさんがここにいるのは極秘だ。敵の総大将を匿っているなどと知れれば、彼の命もシェイドの立場も悪くなるからだ。
私は冷や汗をかきながら扉まで歩いていくと、深呼吸をして返事をする。
「はい」
「俺だ、シェイドだ」
訪問者の素性がわかり、ほっと胸を撫で下ろす。私は警戒を解いて扉を開けると、彼を笑顔で迎えた。
「彼はまだ起きてないわ」
名前は出さずにダガロフさんの状況を説明すると、シェイドは小さく頷いて素早く部屋の中に入る。
「もちろん、死なせはしないわ」
たとえ敵であっても、看護の精神は個人の属性などによって差別しないこと。誰にも平等に看護を受ける権利があるのだ。
それに私も、この人を死なせてはいけないと思う。シェイドにとって大切な仲間ならなおさら。自分が持ちうるすべての力を使ってでも助けようと、強い意思を抱きながら砦を目指した。
ダガロフさんを味方の兵の目を盗みながら砦に連れ帰り、他に当てがなかったので私の部屋の寝台で休ませた。
左目は見たところ穿孔はしておらず、角膜の表面が傷ついてできる潰瘍になっていた。
通常なら目薬や眼軟膏で治療するのだが、ここでは抗菌効果のあるびわの茶葉で目を洗うのが主流らしい。原始的ではあるが、できる限り手は尽くした。
戦況は団長を失ったことで王宮騎士団が撤退、事実上の月光十字軍とミグナフタ国の勝利となった。
そしてダガロフさんを匿うこと三日目の朝。私は彼が眠っている間に、部屋の至る所に濡れた布をかけていた。
角膜潰瘍は細菌感染などでさらに角膜に穴が開いてしまわないようにすることが要であり、ここには根本的な治療ができる目薬も道具も揃っていないため、目のバリア機能を上げる涙が乾かないように湿度管理をする必要があった。
「改めて感じるけれど、僻地の看護だわ」
元いた世界なら助かる病や怪我も、この世界では助からないものが多い。今回だって、ダガロフさんの角膜が穿孔していたら縫う必要があった。もちろん縫合は医者の分野であるし、そもそも麻酔なしでは不可能な処置だ。
不幸中の幸いとしか言いようがないわね。
顔を顰めていると、部屋をノックされる。ビクッと肩が震えて、恐る恐る扉を見やった。
ダガロフさんがここにいるのは極秘だ。敵の総大将を匿っているなどと知れれば、彼の命もシェイドの立場も悪くなるからだ。
私は冷や汗をかきながら扉まで歩いていくと、深呼吸をして返事をする。
「はい」
「俺だ、シェイドだ」
訪問者の素性がわかり、ほっと胸を撫で下ろす。私は警戒を解いて扉を開けると、彼を笑顔で迎えた。
「彼はまだ起きてないわ」
名前は出さずにダガロフさんの状況を説明すると、シェイドは小さく頷いて素早く部屋の中に入る。