異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「初めに、お前たちを指名したのは治療師の中でも優秀だと聞いているからだ。そして今回の依頼はミグナフタ国の西に位置するエグドラの町で大量発生した謎の感染症を食い止めることと、感染者の治療にあたること」
町で大量発生したとなると、規模は相当なものなのかもしれない。まずは感染症の特定が必要だと考えながら、私は尋ねる。
「謎の感染症、ですか?」
「具体的な症状はこちらに情報が入っていない。なにせ調査に行かせた人間も感染し、数日で息を引き取ったと施療院から報告を受けているからね」
それを聞いたマルクが目を見張って、「数日で!?」と声をあげる。
「施療院の治療師から、感染の原因や経路は聞けなかったんですか」
マルクの横でシルヴィ治療師長が冷静に口を開く。政務官の前だからか、いつもの砕けた口調から敬語に変わっていた。
「それがねぇ、聞けなかったのだよ」
不気味な笑みを浮かべたまま、軽く知らないと言ってのける政務官に呆れる。そんな簡単に片づけられても困るのだ。数日で死に至る感染症が流行している町へ赴くことがどんなに危険か、考えれば子供にだってわかる。当然、バルトン政務官も承知のはずだ。
「安全の確認が取れていない場所へ、いきなり王宮治療師を派遣するのは無理がある。まずは町の周辺住民に聞き込み調査をすべきだ」
黙って話を聞いていたシェイドが壁から背を離して、バルトン政務官の前に立つ。シェイドの強い眼光に怯みながらも、バルトン政務官は言葉を返す。
「調査をしている間に、町民が亡くなってもよいと言うのですか。病は数日で人の命を奪う。もはや誰かが足を運ばなければ、死者は増えて感染の規模も広がる一方ですぞ」
「誰かを犠牲にしなければ救えない事態を招いたのは、人の上に立つ者の力量不足ゆえだ。治療師も町の人間も無事でなければ意味がない」
頑としてシェイドも譲らない。どちらの意見も正しいので意見は拮抗してしまうが、私もこの命を勝手に手放すことはできない。私を命がけで救ってくれた人や大切に思ってくれている人を悲しませないためにも、生きることは自分の責任だと思っている。
とはいえ、バルトン政務官の言う通り一刻を争う状態なのも事実。私は悩んだ末に、シェイドほうへ体を向けた。
「シェイド様、私は行きます」
「だが、あなたをみすみす死なせるわけには……」
「私は治療師として、救える命があるのなら救いたいんです。無茶はしません。十分に注意しながら治療にあたります」
首を縦に振らないシェイドに、言葉を重ねて説得を試みる。意見を固持する私に、彼はなにか言いたげな顔をしたけれど、折れてくれたのか諦めにも近い笑みをこぼす。
町で大量発生したとなると、規模は相当なものなのかもしれない。まずは感染症の特定が必要だと考えながら、私は尋ねる。
「謎の感染症、ですか?」
「具体的な症状はこちらに情報が入っていない。なにせ調査に行かせた人間も感染し、数日で息を引き取ったと施療院から報告を受けているからね」
それを聞いたマルクが目を見張って、「数日で!?」と声をあげる。
「施療院の治療師から、感染の原因や経路は聞けなかったんですか」
マルクの横でシルヴィ治療師長が冷静に口を開く。政務官の前だからか、いつもの砕けた口調から敬語に変わっていた。
「それがねぇ、聞けなかったのだよ」
不気味な笑みを浮かべたまま、軽く知らないと言ってのける政務官に呆れる。そんな簡単に片づけられても困るのだ。数日で死に至る感染症が流行している町へ赴くことがどんなに危険か、考えれば子供にだってわかる。当然、バルトン政務官も承知のはずだ。
「安全の確認が取れていない場所へ、いきなり王宮治療師を派遣するのは無理がある。まずは町の周辺住民に聞き込み調査をすべきだ」
黙って話を聞いていたシェイドが壁から背を離して、バルトン政務官の前に立つ。シェイドの強い眼光に怯みながらも、バルトン政務官は言葉を返す。
「調査をしている間に、町民が亡くなってもよいと言うのですか。病は数日で人の命を奪う。もはや誰かが足を運ばなければ、死者は増えて感染の規模も広がる一方ですぞ」
「誰かを犠牲にしなければ救えない事態を招いたのは、人の上に立つ者の力量不足ゆえだ。治療師も町の人間も無事でなければ意味がない」
頑としてシェイドも譲らない。どちらの意見も正しいので意見は拮抗してしまうが、私もこの命を勝手に手放すことはできない。私を命がけで救ってくれた人や大切に思ってくれている人を悲しませないためにも、生きることは自分の責任だと思っている。
とはいえ、バルトン政務官の言う通り一刻を争う状態なのも事実。私は悩んだ末に、シェイドほうへ体を向けた。
「シェイド様、私は行きます」
「だが、あなたをみすみす死なせるわけには……」
「私は治療師として、救える命があるのなら救いたいんです。無茶はしません。十分に注意しながら治療にあたります」
首を縦に振らないシェイドに、言葉を重ねて説得を試みる。意見を固持する私に、彼はなにか言いたげな顔をしたけれど、折れてくれたのか諦めにも近い笑みをこぼす。