異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「シルヴィ治療師長、それってハーブのローズマリーですよね」
「おう、ハーブは精神的なだるさにはもってこいだ。頭の働きもよくするしな」
小瓶の縁に鼻を近づけて深呼吸しているシルヴィ治療師長は、いつもかったるそうにしているが仕事にはストイックだ。相当、疲労困憊しているらしい。
「よけいな心労をかけるな」
すまなそうに言うシェイドは私たちを追い越して前に出ると、こちらに向き直り足を止めた。改めて真っ正面から見据えてきた彼の真摯な瞳に、息を呑む。私は目を瞬かせて、シルヴィ治療師長とマルクと一緒に立ち止まる。
「共に行くことは立場上叶わないが、あなたたちのことは必ず俺が守る。なにかあれば、すぐに頼ってほしい」
王子でありながら、私たちに頭を下げるシェイドに確信する。彼が王になった国ならば民は皆、幸せになれるだろうと。
しばし返事も忘れて、私はわけ隔てなく誰かを思いやれるシェイドの威風堂々な姿に心を打たれていた。
翌日、城お抱えの馬車で五時間かけてエグドラの町境にある街道にやってきた。ここで馬車を止め、徒歩十五分かけて町へ向かうことになっている。
理由はエグドラの町に入れば、御者に感染する可能性があるからだ。すぐに発症しなくても病原体が体内に潜伏していることもある。潜伏期間中に城に戻れば、城内で感染が広がることもあり得るのだ。
今回は発症から数日で死に至るという話なので病原体の感染力は強く、潜伏期間も短いことが考えられるので念には念を入れた。
私たちは御者と別れ、治療道具を手に街道を歩く。
「いよいよですね」
マルクは顔を強張らせながら、鞄の持ち手を強く握っている。緊張をするのも無理はない。もしかしたら、私たちも死ぬかもしれない。謎の病と戦うのだから、ある意味戦場に赴くのと同じだ。
私は縮こまっているマルクの肩に手を乗せ、安心させるように微笑みかける。
「大丈夫よ、皆で乗り越えましょう」
「若菜さん……はいっ」
完全に晴れたわけではないが、マルクの表情は幾分か明るくなった。それに安堵していると、シルヴィ治療師長がマルクの頭に手を乗せる。
「治療師長がふたりもいるんだぞ、大船に乗ったつもりでいろ。ただし、お前を即戦力としてカウントしてるからな、身を粉にして働け」
随分な物言いだが、純粋なマルクは「はいっ」と目を輝かせながら返事をしている。なぜだが、従順な子犬と飼い主を見ているようで胸が痛んだ。
「おう、ハーブは精神的なだるさにはもってこいだ。頭の働きもよくするしな」
小瓶の縁に鼻を近づけて深呼吸しているシルヴィ治療師長は、いつもかったるそうにしているが仕事にはストイックだ。相当、疲労困憊しているらしい。
「よけいな心労をかけるな」
すまなそうに言うシェイドは私たちを追い越して前に出ると、こちらに向き直り足を止めた。改めて真っ正面から見据えてきた彼の真摯な瞳に、息を呑む。私は目を瞬かせて、シルヴィ治療師長とマルクと一緒に立ち止まる。
「共に行くことは立場上叶わないが、あなたたちのことは必ず俺が守る。なにかあれば、すぐに頼ってほしい」
王子でありながら、私たちに頭を下げるシェイドに確信する。彼が王になった国ならば民は皆、幸せになれるだろうと。
しばし返事も忘れて、私はわけ隔てなく誰かを思いやれるシェイドの威風堂々な姿に心を打たれていた。
翌日、城お抱えの馬車で五時間かけてエグドラの町境にある街道にやってきた。ここで馬車を止め、徒歩十五分かけて町へ向かうことになっている。
理由はエグドラの町に入れば、御者に感染する可能性があるからだ。すぐに発症しなくても病原体が体内に潜伏していることもある。潜伏期間中に城に戻れば、城内で感染が広がることもあり得るのだ。
今回は発症から数日で死に至るという話なので病原体の感染力は強く、潜伏期間も短いことが考えられるので念には念を入れた。
私たちは御者と別れ、治療道具を手に街道を歩く。
「いよいよですね」
マルクは顔を強張らせながら、鞄の持ち手を強く握っている。緊張をするのも無理はない。もしかしたら、私たちも死ぬかもしれない。謎の病と戦うのだから、ある意味戦場に赴くのと同じだ。
私は縮こまっているマルクの肩に手を乗せ、安心させるように微笑みかける。
「大丈夫よ、皆で乗り越えましょう」
「若菜さん……はいっ」
完全に晴れたわけではないが、マルクの表情は幾分か明るくなった。それに安堵していると、シルヴィ治療師長がマルクの頭に手を乗せる。
「治療師長がふたりもいるんだぞ、大船に乗ったつもりでいろ。ただし、お前を即戦力としてカウントしてるからな、身を粉にして働け」
随分な物言いだが、純粋なマルクは「はいっ」と目を輝かせながら返事をしている。なぜだが、従順な子犬と飼い主を見ているようで胸が痛んだ。