異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「戦うことしか能のない男だが、俺にできることがあれば声をかけてくれ」

 今回のエグドラ行きに同行しているダガロフさんが誠実さを宿した金の瞳を細めてそう言った。視線が合うと、私は彼の申し出に敬意を払うように頭を下げる。

「自分の命がかかっているのに同行してくれただけでなく、力を貸してくださるとまで言ってくれた。本当にありがとうございます」

「いいえ。あなたが俺にしてくれたことを思えば、当然のことですよ。それに王子は施療院へ治療師長を二名も派遣したこと、それを指示したのがバルトン政務官である部分に違和感を抱いているようです」

 違和感というのはシルヴィ治療師長の言った通り、危険な匂いがプンプンするというあれだろうか。

 エグドラの施療院に私たちを派遣したことには、なにか裏があるのかもしれない。

「つまり、バルトン政務官には注意しろってことですか」

 シルヴィ治療師長はダガロフさん言葉の意図を読んで、不愉快な顔をする。

 王宮治療師として働くようになってから知ったのだが、治療師長よりも騎士は爵位を賜っているので身分は上なのだとか。なのでシルヴィ治療師長はダガロフさんに敬語を使っている。けれど、ダガロフさんは私に対してだけ敬語で話すので理由を尋ねたら、「俺はシェイド様だけでなく、あなたにも忠誠を誓いましたから」と言っていた。
 
 目の治療をしたのは、私が患者を見捨てられないからだ。自分のためにしたことであって、そこまで恩を感じられることではないのだが、律儀な人だなとダガロフさんを見やる。

 彼はシルヴィ治療師長の言葉に苦い顔で頷き、重苦しく口を開いた。

「バルトン政務官は俺たち月光十字軍をミグナフタに受け入れることに反対の意を唱えている。あなた方はなんらかの政治闘争に巻き込まれているのかもしれない」

 ダガロフさんの話で、シェイドの言っていた不測の事態がなんなのかに気づく。

 私たちは歓迎されていないから、感染症の流行っている町へ追いやられるということみたいだ。だとしたら、いくつか引っかかる点がある。

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