異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「月光十字軍の人間が気に入らないのなら、なぜミグナフタの治療師長までエグドラの町に送ったの?」

 どうして厳選した人員が私たちなのか、考えれば考えるほど無意識のうちに眉間にしわが寄るのがわかる。

 バルトン政務官の思惑が見えてこないことに不安を覚えていると、マルクも「月光十字軍の治療師なら他にもいますしね」と同意見のようだ。

 常に刃物を背にあてられているようで、緊張に生きた心地がしない。だが、ここでいくら思考を巡らせたところで自分にできることなどひとつしかないのだ。

 私は目の前の命を救うことだけに集中しよう。

 様々な雑念を振り切るように町の方角を見据えたとき、向かいからところどころ布が薄くなっているつぎはぎだらけの服を身に着けた男たちが駆けてくる。腰には短剣が差さっており、頬や腕に出来た傷跡が人相の悪さを際立たせている。

 荒くれ者と呼ぶのが一番しっくりくる。ざっと五人ほどいるのだが、大きく膨れ上がった白い布袋を肩に担いで背後をしきりに気にしているところを見るとあきらかに善人ではなさそうだ。

「お前たち、止まれ」

 背中に担いだ槍の柄に手をかけ、ダガロフさんは私たちを背に庇うように荒くれ者たちの前に出て仁王立ちする。
荒くれ者たちは顔を見合わせると、担いでいた布袋を地面に放り投げる。その拍子に宝石のあしらわれた金食器やサファイアのブローチなどが飛び出る。

 それらを横目に見たダガロフさんは、荒くれ者たちを視線で鋭く射貫く。

「この金品をどのようにして手に入れたのか、説明しろ」

 元騎士団長の放つ気迫は、守られている私たちの体さえ竦み上がらせる。獅子を相手にしているのではないか、と錯覚するほどだ。

「ひいっ、お前何者だよ!」

 情けない悲鳴を上げながら、真っ向からダガロフさんと対峙している荒くれ者たちは次々に腰を抜かしていく。

「俺はダガロフ・アルバート、月光十字軍に属する騎士だ。それで、その金品の出所はどこだ? 白状しなければ、俺とここで一戦交えることになるが」

「こ、これは流行り病で死んだ金持ちどもの家からくすねたんだよ!」

 声を裏返らせながら白状した荒くれ者は、どうやら盗賊だったらしい。堂々とくすねたことを宣言するのもそうかと思うけれど、盗みを働かなければ生きていけないのかもしれない。つくづく自分がいた世界は恵まれていたなと思っていると、盗賊たちは観念したのかこちらから聞かずとも自分たちから話し出した。

< 94 / 176 >

この作品をシェア

pagetop