異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「奇病が流行って、あの町の人間はほとんど死んだようなものだからな」

「そいつらだって遺品が無駄になるくらいなら、誰かに恵みたいって思うはずだぜ」

 開き直っている盗賊たちの口からは、信じられない言葉が飛び交う。

「奇病って、まさかエグドラの町から来たのか」

 わずかに目を見張ってダガロフさんが尋ねると、盗賊たちは「そうだよ」とあっさり認める。

「おい、何日あの町に滞在してた」

 シルヴィ治療師長が尋ねると、盗賊たちは考えるような素振りを見せて「五日だ」と答えた。それどころか、話を聞いているうちに何度もエグドラの町に行って金品を盗んでいることが判明した。

「それだけエグドラの町にいて病にかかっていないだなんて、感染力が弱いのか強いのかわかりませんね」

 マルクの言うとおりだ。目の前の男たちは町の人間がほとんど死んだようなものと言っていた。なので感染力は強いのだろうが、五日滞在してもかからない人間がいる。

「ますますエグドラの町に蔓延しているものがなんなのか、掴めなくなってきたわ」

「ともかく、こいつらが病原体を保持している可能性がある。感染を拡大させないためにも一緒に施療院に連れていくべきだ」

 今のところ発症していない彼らを再びあの町に引き戻すのは気が引けるが、これ以上感染を広げないためにも隔離は必要なので、私もシルヴィ治療師長の意見に賛成だった。

 それに施療院にいてくれれば、彼らに感染兆候が現れた際に早い段階で治療してあげられる。病原体や感染経路の特定もできない今、それが最善の策に思えた。

「では、縄にかけさせてもらうぞ」

 ダガロフさんが縄を取り出すと、シルヴィ治療師長も「仕方ねーな」と文句を言いながら盗賊たちを縛っていく。

「お前たち、ちゃんと風呂に入ってんのか? 酸っぱい匂いがすんぞ」

 口が悪いシルヴィ治療師長と盗賊。どちらが悪人かわからなくなるな、と私は顔を引き攣らせる。

 それから行きの倍の人数、騎士と治療師と盗賊という異色の九人でエグドラの町に向けて歩き出した。

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