異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「ベットは四つ用意されてますが、若菜さんまで僕らと同じ部屋だなんて落ち着かないですよね?」

 マルクが気遣うような視線を向けてきた。私は治療道具と私物が一緒に入っていた鞄を整理しながら、笑みを浮かべて首を横に振る。

「そんなことないわ。私たちは仲間、男女なんて性別は気にしないで」

 元いた世界だったら、男性と同じ部屋で寝ることに抵抗があっただろう。でも、月光十字軍と行動をともにしたばかりの頃、幕舎で紅一点状態で寝泊まりしていたので今さら抵抗はない。

 それにシルヴィ治療師長やマルク、ダガロフさんのことは信用している。なので襲われるかもしれないなどの心配はなかった。

 しかし、それを聞いていたシルヴィ治療師長は呆れた顔で私を見る。

「お前、そんなんだから三十になっても独り身なんだよ」

「失礼ながら、シルヴィ治療師長には言われたくありません。私と年齢も結婚事情も同じじゃないですか」

「俺はできないんじゃなくて、作らないだけだ」

 ……この言い訳は、私自身使っていたものでもある。同僚や高校時代の友人に会うたびに「彼氏は作らないの?」と聞かれ、「今は仕事が大事だから」「今はいらないから」と自分から作ってないという主張をしてきた。

 客観的に聞くと、見栄を張っているようで恥ずかしい。

「頑張りましょうね、シルヴィ治療師長……」

 なにも傷を抉り合うことはない。同士だと思って励まし合おう。そうひとりで何度も頷いていたら「は?」とシルヴィ治療師長は口を開けたまま呆けていた。

「もしもの事態は起こらない。俺がいるのだからな」

 槍を壁に立てかけているダガロフさんを、私を除く二名は苦い顔で見ている。

 これから向き合うのは自分の命を奪うかもしれない感染症患者。冗談を言える状況ではないというのに、私は平常心でいられている。それはきっと皆のおかげだと、仲間の心強さが身に染みた。

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