憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!
坂巻さんは私の手を握ると歩きだし、その温もりを感じながら私は彼の背中を見上げる。


彼にはさっきの返事をしないといけない。

貴方のことは嫌いでも好きでもなく単なる憧れだ…と言い切り、それ以上の感情は生まれもしないんだと教えないと。


……でも、言おうとしても声にはならなくて、「坂巻さん」と呼ぶ声すらも蚊の鳴くような感じで、絶対に届いてないだろうと思ったのに__。



「…ん?何か言った?」


振り返る彼に驚く。
思わず足が立ち止まり、呆然と顔を見上げてしまった。


「どうした?」


足が痛い?と訊ねる彼を見つめ、ううん…と首を横に振る。


「あの…」


決意が揺るぎそうになり、ブンブンと頭を横に振り回した。

慌てて気持ちを引き締め直す。
言うんだ…と自分を励ましてから唇を開き、「あの、私…」と続けた。


「坂巻さんとは……付き合う自信がありません」


そう言うと、あからさまに表情を曇らされる。
寄せる眉根に縦皺が入り、ぎゅっと胸が潰れそうになった。でも……


「ごめんなさい。私…坂巻さんには憧れるだけで十分なんです……」


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