すべては、
終演の後
「東先輩!どうして東先輩が助けに来てくれたんですか!?当初の予定だと東先輩は逮捕の担当じゃなかったですよね?」


木下さんは護送されていき、私はぴんぴんしていたが念のため病院で検査を受けるため、先輩と一緒に彼の車へと向かった。


「………」


沢山の車を縫って前を歩く先輩からは答えが返ってこない。その代わり別の人がその答えをくれた。


「実里が心配で担当変わってもらったのよね?」


私達の前に、腕を組みニヤニヤ笑うスーツ姿の女性が立っていた。


「西部さん!」


「実里、目的は達成したし本名で呼んでいいわよ。」


「あっ、はい、朝比奈さん。」


そう、西部とはおとり捜査のための偽名だ。
私の姓の野中も偽名。名の実里は本名だけど。

おとり捜査に慣れていない私がボロを出しにくいように、下の名前だけはそのままのを使うことにしたのだ。

何かの拍子で本当の名字に反応してしまった時、それなりの言い訳は出来るが…
例えば、旧姓がそうだったから反応してしまったとか。
でも、下の名前は難しい。
聞き間違えたとか言えたとしても、不信感が残る可能性がある。

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