腹黒上司が実は激甘だった件について。
「坪内さん、好きです」

気付いたら口からポロっとこぼれ出ていた。
ああ、奈穂子の言っていたことは本当だ。
溢れたら自然と出てくるもんなんだ。

坪内さんは足を止めると、私の顔を覗きこんで言う。

「もう一度、俺の目を見て言ってよ」

艶っぽい王子様スマイルで私を見つめる。
恥ずかしいけど、伝えたい気持ちの方が勝つみたいだ。

「坪内さんが好きです」

その瞬間、私の手がぐいっと引き寄せられる。
ぽすんと坪内さんの胸に飛び込んだかと思うと、ぎゅうっと抱きしめられた。

「ようやく捕まえたよ、お姫様」

耳元で言われてくすぐったくなる。
お姫様とか、そんな歯の浮くような台詞、似合うのは坪内さんだけだ。
でも嬉しくて自然と頬が緩んだ。

視線が絡むと、坪内さんが今までにないくらい優しい顔で私に影を落とす。
軽く、触れるだけのキスなのに、幸せでとろけてしまいそうだった。

「続きは帰ってからな」

ニッコリ言われて、気付く。
家の近所の道端で、何をしているんだ、何を。
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