腹黒上司が実は激甘だった件について。
好きだと言ったけれど、急に恥ずかしさでいっぱいになった。
な、何か言わなければ。

「ご、ご飯作りますか?」

テンパって出てきた言葉は、色気より食い気だった。
とたんに坪内さんは笑い出す。

「俺はご飯より日菜子を食べたい」

あああ。
好きだと言ったとたんに名前呼びだよ。
それに私を食べたいとか、肉食にもほどがある。
心臓がいくつあっても足りないくらいだ。

坪内さんは私を引き寄せると、さっきよりも激しくキスをした。
すごく優しくてこのまま流されそうになるのを必死でこらえる。

「まっ、待ってください」
「何?」
「聞いてほしいことがあるんです」

好きな気持ちは伝えた。
あとは不安な気持ちを伝えなければ。
私のトラウマを。

不安な気持ちを受け入れてもらえるだろうか。
私は震えそうになる声を抑えながら、口を開く。

「私、今までまともな恋愛したことなくて、いつも何か違うって振られてばかりで、最後の彼には浮気されたんです。浮気現場も見ちゃって、それがトラウマでもう恋愛なんてしたくなくて。だけど坪内さんのこと好きになっちゃって。こんな私が上手くやっていけるのか、坪内さんをがっかりさせちゃってまた振られたらどうしようとか…」

言いながら、だんだん俯きがちになってしまう。
そんな私の手を、坪内さんは包むように握ってくれる。
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