古都奈良の和カフェあじさい堂花暦
「地元の公立中学。うちは第二、第三で平城中とか萬葉中とか受け取ったけど。奈っちゃんは若草山一本やってん」

「つまりそれくらい自信があったってこと?」
「それもあるけど……。奈っちゃんのお家、お父さんが厳しいっちゅうか古くて。奈っちゃんのとこお兄ちゃんもおるんやけど三笠山中学行っとって」

「俺の後輩やな」
「嘘っ」
 厨房から聞こえてきた声に私は思わず声を引っ繰り返してしまった。

「なにが嘘やねん」
「だって……え? 奏輔さん三笠山学園出身なんですか」

 三笠山学園というのは、平城宮跡の方にある中高一貫の私立の男子校である。

 佐保ちゃんの通う若草山学園も名門校として有名だが、三笠山学園はそれよりもさらに上を行く進学校で、偏差値の高さは全国でもトップレベルだといわれていた。

 毎年、何人も東大、京大をはじめとする有名大学に進学するうえ、卒業生には政治家や財界の著名人も数多くいる。

(それが、なんでまた……)
 そう思ったのを見越したように奏輔さんが厨房から顔を出した。
「三笠山出て、なんでまたこんなとこでショボい商売やっとんのやろ、って思ったやろ?」

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