古都奈良の和カフェあじさい堂花暦
「思ってませんよ、そんなこと! ただ、そんな風に見えないから意外だっただけで」
「悠花さん、それフォローになってない」

 佐保ちゃんがくすっと笑って涙を拭いた。

「え、ええっと。それで、奈月ちゃんのお兄さんが三笠山学園だったっていうのと、奈月ちゃんが若草山以外受験しなかったっていうのはどういう……」

「兄貴の方に金かかるから妹は公立中学で十分っちゅうんやろ? どうしても行きたいんやったら若草山やったら許す、それ以外やったら行く意味ないって」
 厨房から出て来た奏輔さんがそっけなく言った。

「そんな時代錯誤な! 今どき男だから女だからって……」
 そこまで言って私は口をつぐんだ。

 高校卒業後の進路について両親に相談したときのことを思い出す。

「あんた、女の子が東京の大学なんか行ってどうするん? 地元のそこそこのとこでええやん」
「どうせ結婚して子ども出来たらまともにお勤めなんか出来へんのやから。大学なんかどこでも一緒やろ? 下手に東京の大学出てむこうで勤めとったなんていうたら生意気や思われて嫁の貰い手がなくなるで」

 我が家にもガッチガチの古い価値観の人がいたんだった……。

 しかも、私にそういう一方で弟の佳彦には、
「佳くんには、いいところ行って貰わんとね」
とか言って、塾の送り迎えからお弁当、夜食の差し入れ、果ては福岡の太宰府天満宮までわざわざ合格御守を買いに行ったりとサポートに余念がなかった。

 ちなみに私の時も一応父が御守は買ってきてくれたんだけど、それは東大寺のものだった。いや、ありがたかったけどね! 手近感が半端ないのは否定できないよね……。
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