古都奈良の和カフェあじさい堂花暦
「本当のことやろ。そら受験に落ちたり学校行けんくなったり色々大変なんは分かるけど、だからっちゅうて心配して家まで来てくれた友達にそないな悪態ついて言いっちゅうことにはならへんやろ。被害者気取りもいいとこや。アホちゃうか」

「でも、奈っちゃんが可哀想なんは本当やんか」
 佐保ちゃんが抗議する。

「どこが可哀想や。試験に落ちたんは自分の努力が足りんかったか運が悪かったか、まあどっちにしろ誰のせいでもないわな。偏屈な親父のもとに生まれたっちゅうのも運が悪かったといえば悪かったけど、それも誰のせいでもない。学校行けんようになったのも何があったか知らんけど、嫌やから行かへんって決めたのは自分やろ? そんで今実際に行かんですんどるんやろ? そしたら全部自分の好きなようにやっとるやないか。なーんも可哀想なことあらへん」

「奈っちゃんは好きで学校休んどるんとちがう! 行きたくてもいけないんや」
「そんなん本人に聞いてみんと分からへんやろ」

「分かるわ! 好きで休んどるんやったら今の自分のこと『落ちぶれとる』なんて言うはずない」

「ふうん……。まあ、そいつのことはええわ。そんで佐保はどうしたいんや」
「えっ」
 佐保ちゃんが虚をつかれたように、ぱちぱちと瞬きをした。
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