古都奈良の和カフェあじさい堂花暦
それでも奈月ちゃんは頑張って学校に来ていたみたいなのだけれど、そのグループのからかいや嫌がらせはどんどんエスカレートしていき、中二の夏休み前にあった一泊二日のキャンプ行事では一緒のグループになってくれる子がおらず、くじ引きで一つのグループに入ったものの当日は結局欠席してしまったのだという。

 それについても、「サボり」だの「協調性がない」だのと責められて、その後すぐに夏休みに入ったものの、奈月ちゃんは夏休み中の登校日にも部活にも一度も姿を見せなかったそうだ。

 そして夏休み明けの二学期から今日まで、一度も登校していないのだという。

「うち、奈っちゃんがそんなつらい思いしとるのに何もしらんと呑気にしとって……。知った今でも何をどうしてあげたらええのか分からんくて、情けなくて……」

 言いながら佐保ちゃんはまた、涙をぽろぽろとこぼし始めた。
 それを見ながら私も、どうしていいのか分からずに唇を噛んだ。

 いじめも不登校も根深い問題だ。はたの人間が軽々しく口をはさめることじゃない。
 奈月ちゃんの状況はとても可哀想だし、それを知った佐保ちゃんが心を痛める気持ちもよく分かる。

 けれど、奈月ちゃんは今佐保ちゃんに対して心を閉ざしてしまっている。
 その状態で何が出来るか、と問われるととても難しい。

 下手なことをしたら、よけいに奈月ちゃんを傷つけ、追いつめてしまうことになりかねない。
黙って向かい合っている私たち二人の横で、奏輔さんが
「まあ~、人生色々あるわな~」
と、うーんと両手を真上にあげて伸びをしながら言った。
< 60 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop