古都奈良の和カフェあじさい堂花暦
それでも私は混乱する頭で必死に考えて、不倫なんていうのは事実無根で、今回のことは長谷川夫人のまったくの誤解だというメールを航平に送った。
返事は来なかった。
電話はいつかけても繋がらず、着信が残っているはずなのにコールバックもなかった。
意地になって何度もかけた。
やがてかえってきたメールには、
「仕事が忙しくて今は会えない」
ということが簡単な言葉で綴られていた。
それ以上、追いすがってでも関係を繋ぎとめようとする情熱も気力もその時の私にはなかった。
それでも自分は何も悪いことはしていないのだからと胸を張って新しい職場に出勤した。
けれど、「顧客と浮気して飛ばされた女」の噂はそこまで届いてしまっていて。
すべてに疲れてしまっていた私は、新しい同僚たちの陰口に対して誤解を解こうともせずに退職することを選んだのだった。
佐保ちゃんの話を聞いているうちにそんなことを思い出した。
奈月ちゃんも何も悪いことはしていない。
悪いのは、人の努力の結果を認めずに馬鹿にしたり、からかいのネタにしたりした同級生の方だ。
けれどそんなことは関係ないのだ。
理由は何でもいい。
集団のなかで一度浮き上がってしまって、蔭口や誹謗中傷のターゲットにされてしまうともう自分の力ではどうあがいても駄目なのだ。
私や奈月ちゃんを非難し、蔭口を叩いた人たちにとってそれは一種の娯楽なのだ。本人たちが自覚していたかどうかは知らない。
けれど、一度「この人は叩いてもいいんだ」みたいな空気が生まれてしまったら、標的にされた者に出来ることはそこから逃げ出すことだけだ。
実際に逃げ出してきた私には奈月ちゃんの気持ちが痛いほどに分かった。
今の奈月ちゃんは誰のことも信じられず、誰とも話したくない気持ちなのかもしれない。
だとしたら、奏輔さんの言う通りほうっておく方がいいんだろうか。
佐保ちゃんが親友のつらい立場を知って力になりたいという気持ちも分かる。
でも、それは今の奈月ちゃんにとっては迷惑でしかないのかな。
それでも……。
奈月ちゃんのつらさや、まわりを拒絶したくなる気持ちに共感しながらも私は少し彼女のことが羨ましかった。
私が弾き出された辛さに耐えきれず逃げ出したときに、追いかけて手を差し伸べようとしてくれる人は誰もいなかったから。
返事は来なかった。
電話はいつかけても繋がらず、着信が残っているはずなのにコールバックもなかった。
意地になって何度もかけた。
やがてかえってきたメールには、
「仕事が忙しくて今は会えない」
ということが簡単な言葉で綴られていた。
それ以上、追いすがってでも関係を繋ぎとめようとする情熱も気力もその時の私にはなかった。
それでも自分は何も悪いことはしていないのだからと胸を張って新しい職場に出勤した。
けれど、「顧客と浮気して飛ばされた女」の噂はそこまで届いてしまっていて。
すべてに疲れてしまっていた私は、新しい同僚たちの陰口に対して誤解を解こうともせずに退職することを選んだのだった。
佐保ちゃんの話を聞いているうちにそんなことを思い出した。
奈月ちゃんも何も悪いことはしていない。
悪いのは、人の努力の結果を認めずに馬鹿にしたり、からかいのネタにしたりした同級生の方だ。
けれどそんなことは関係ないのだ。
理由は何でもいい。
集団のなかで一度浮き上がってしまって、蔭口や誹謗中傷のターゲットにされてしまうともう自分の力ではどうあがいても駄目なのだ。
私や奈月ちゃんを非難し、蔭口を叩いた人たちにとってそれは一種の娯楽なのだ。本人たちが自覚していたかどうかは知らない。
けれど、一度「この人は叩いてもいいんだ」みたいな空気が生まれてしまったら、標的にされた者に出来ることはそこから逃げ出すことだけだ。
実際に逃げ出してきた私には奈月ちゃんの気持ちが痛いほどに分かった。
今の奈月ちゃんは誰のことも信じられず、誰とも話したくない気持ちなのかもしれない。
だとしたら、奏輔さんの言う通りほうっておく方がいいんだろうか。
佐保ちゃんが親友のつらい立場を知って力になりたいという気持ちも分かる。
でも、それは今の奈月ちゃんにとっては迷惑でしかないのかな。
それでも……。
奈月ちゃんのつらさや、まわりを拒絶したくなる気持ちに共感しながらも私は少し彼女のことが羨ましかった。
私が弾き出された辛さに耐えきれず逃げ出したときに、追いかけて手を差し伸べようとしてくれる人は誰もいなかったから。